鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【高麗納戸】こうらいなんど≫

今年2月ごろの話題になりますが、2020年アカデミー賞の受賞パーティーで、松たか子さんが着用されていた和服のことが話題になっていました。

和装のプロの目から見ても、非の打ちどころがない完璧な装いだったと、ネットの記事などに書かれていました。

でも、そのときの和服の色を今回取り上げるわけではないのです。

まず、納戸色(または御納戸色)という色名がそもそも存在します。
https://aura-soma.jp/blog/archives/40029

藍で染めた色のひとつで、緑色を帯びた青色ですが、彩度が低いので鼠色がかった深い青色になります。

変わった名前ですよね。

この色名の由来ははっきりせず、諸説あるのです。

納戸とは、現代で言えばクローゼットのような収納のための部屋のことです。

江戸時代に江戸城内の納戸に出入りした役人の着物の色がこれだったとか、納戸に掛かっていた幕の色だとか、納戸の薄暗い空間のイメージだとか、さまざまあります。

いったんそれは置いておいて、高麗のことを。

松たか子さんのおうちはご存じのとおり、歌舞伎役者の家系です。

その家ごとに、歌舞伎特有の屋号があります。

歌舞伎の演目の最中に、客席から威勢よく声が掛けられるのを聴いたことがあるでしょう。

松たか子さんの先祖、初代松本幸四郎の時についた屋号が「高麗屋」なのです。

時代は下り、江戸中期に大活躍した四代目、松本幸四郎(1737~1802)人気の演目のなかで、彼がまとった衣装の合羽(かっぱ)が評判となり、それに使われていた納戸色を「高麗納戸」と名付けたのがこの色名の由来です。

五代目松本幸四郎のころには、人気の流行色となります。

江戸時代にはこうして「はやりもの」「ブランド」は作られていったのです。

アカデミー賞での松たか子さんの装いは、このような歴史的背景と美意識の高さが垣間見えるものでした。

賞の格式は踏まえつつ、決して嫌味なくラグジュアリー。

海外の女優さんたちのどんな豪華なドレスよりも、品良く芸術性が高かったと思います。

日本人女性の活躍とともに、着物の良さがますます世界に広がっていったら嬉しい限りです。

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/

 

色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2455

 

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