鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【胡粉】ごふん≫

先日のこと、大学時代の友人が彫刻家をしているのですが、その人の個展を見に行きました。

展示されているのは、主に木彫の作品でした。

パーツの一部がとても趣がある感じに白く塗られていたので、なんで塗ったのか聞いてみたところ「胡粉」だというのです。

大学時代に日本画の授業で、胡粉という顔料をよく使ったことを思い出しました。

胡粉はイタボ牡蠣などの貝殻を、焼いたり風化させたりして粉末状にして作る、白色顔料です。

日本画では単独で絵の具として使うだけでなく、他の絵の具と混ぜて淡い色を作ったり、他の絵の具の発色を良くするために下地として塗ったりして使います。

日本画だけでなく、日本人形に塗ったり、建築の彩色にも使われていました。

胡粉には等級があって、下地用には主に目の粗いものを使います。

仕上げに使う、最も上質できめ細かい高級なものを「飛切」(とびきり)と言うそうです。

「とびきりのご馳走」のような言葉は、ここから来ているのですね。

等級が上の胡粉ほど、光沢がある上品な白色になります。

牡蠣の殻を焼いたり風化させたりすると前述しましたが、その風化には10年とか15年も牡蠣殻を天日干しするそうです。

それを石臼で細かく挽くのです。

ところで胡粉の材料となる牡蠣ですが、旬が年に2回あるのはご存知でしょうか。

正確には、主に2種類に分けられるので、それぞれ旬の時期が違うということです。

ポピュラーに食べられているのは真牡蠣の方で、こちらは10月から4月ごろまで水揚げされます。

そして最も美味しいのは12月から2月ごろまでの冬の時期。

牡蠣の旬は冬、と多くの人が認識されているでしょう。

もう一種類の牡蠣は岩牡蠣で、こちらは6月から9月頃までの夏が旬です。

冬に食べる真牡蠣は養殖で1~3年で成長するのに対して、岩牡蠣の方は4~5年もかけて成長するそうで、食される時の大きさは全然違います。

しかも岩牡蠣は20メートルほどの深い海で育つので、天然物にしても養殖物であっても捕獲は大変です。

しかし、どちらの牡蠣もそれぞれの良さがあります。

冬の真牡蠣は小ぶりですが、その分凝縮されたクリーミーな味わい。

夏の岩牡蠣は大きくてジューシーだと言われます。

今の時期、5月はどちらの牡蠣にしても端境期。

それぞれの季節が来たら美味しい牡蠣を味わいたいですね。

牡蠣を食べるときに、この殻から作られる美しい白色のこともぜひ思い出してください。

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/

また、シンガーソングライターの一面も持っています。
6月に初のオリジナルアルバムのCDをリリースしました。
作詞作曲はもとより、ジャケットのイラストも自身の作品です。

 

「烏兎匆匆」
全7曲入り/1500円(税込)
こちらからオンラインで購入できます。
https://reiko-ayusawa.com/
当分の間、送料無料です

 

色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2284