鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【緑土色】りょくどしょく≫

日本画や日本の文化財に用いられる緑色の顔料として、
最も多く見られるものは「緑青」(ろくしょう)です。

緑青は銅が酸化することで生成される化合物で、
名前の通り青みを帯びた緑色をしています。

銅板の表面に被膜を作って内部の腐食を防ぐ効果や、
抗菌効果もあります。

かつては緑青に毒性があると言われていましたが、
現在では毒性はないことがわかっています。

一方で、銅ではなく鉄を含んだ緑色顔料が、
今回取り上げた「緑土」です。

緑青に比べれば圧倒的に使われた数は少なく、
色合いも控えめで地味です。

石仏や古墳の壁画などに見られるそうですが、
最も有名なところでは、正倉院に納められた
伎楽面に緑土が使われていたとのことです。

伎楽という7~8世紀ごろ流行した
舞踏劇に用いられた仮面です。

仮面をつけて歌い踊る芸能が、
飛鳥時代に流行していたことに驚きました。

正倉院には今も百数十点のお面が残っているそうですが、
飛鳥時代の雰囲気が伝わる、
ちょっとユーモラスでエキゾチックなお面です。

この緑土の成分ですが、
セラドナイトなどを主成分とする粘土です。

セラドナイトは比較的ありふれた天然鉱物。

ありふれたぶん、
主張の強くないニュートラルな灰色がかったグリーンです。

顔料の話ではなく色彩として見たときの話ですが、
実際、絵を描いたり着物の柄に用いたりする場合、
この緑土色のように主張のない穏やかな色が
基調色に適していることが多いのです。

それはまるで自然のなかに
さまざまな花が咲いたり鳥が集まったりするとき、
背景になる土の色や木々の色が
「捨て色」になってくれているから、
全体がまとまるのと似ています。

捨て色とは、ある色を
より鮮やかに引き立たせるためにあえて使う、
主張の強くない色のことです。

自然界において、
目立つ色ばかりでは不調和になってしまいます。

緑土色のように縁の下の力持ちのような存在が、
世界全体に調和と美しさをもたらしてくれるのです。

 

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/

また、シンガーソングライターの一面も持っています。
6月に初のオリジナルアルバムのCDをリリースしました。
作詞作曲はもとより、ジャケットのイラストも自身の作品です。

 

「烏兎匆匆」
全7曲入り/1500円(税込)
こちらからオンラインで購入できます。
https://reiko-ayusawa.com/
当分の間、送料無料です

 

色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2108

参考:伎楽info http://gigaku.info/