鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【飴色】あめいろ≫

今年はひっそりと初詣に行きました。

一都三県に緊急事態宣言が出される前でした。

私が生まれ育った土地の神社で、下野(しもつけ)の一之宮です。

長い石段を昇っていくと、広い境内は驚くほど空いていて、スムーズに参拝を済ませました。

神社を取り巻く街の景色も閑散とし、今年はずいぶん変わっていました。

初詣の時期に石段の下の道路沿いには、例年ならたくさんの屋台がならぶのです。

子どものころに神社の下の屋台で、べっこう飴を売っているのを見ました。

それは冬の日差しを受けて、誇らしげに黄金色に輝いていました。

飴色という色の名前は、飴以外のものを表現するのによく使われます。

たとえば、長い時間を経て、丁寧に扱われてきた、木製品の表面の色合いを表すときなどです。

よく手入れされた艶のあるアンティークの家具は、積み重ねてきた時間と歴史を感じさせます。

そんなときに、飴色と表現するのです。

また、こんなのもあります。

洋食の料理でよくベースに使う、飴色玉ねぎ。

みじん切りにした玉ねぎを根気よく炒めると、やがて茶色っぽくなります。

それを飴色と呼ぶのは、生のままでは辛い玉ねぎが、甘い味に変化することと関係があるのかもしれません。

さらに炒め続けると、黒く焦げて苦くなるのですが、その直前に玉ねぎは最も甘くなるのです。

飴色の由来は、デンプンと麦芽を主な材料として作られた水飴の色から来ています。

現代の水飴は透明ですが、古来の水飴は麦芽によって明るい茶褐色をしていたのです。

意外にもその起源は古く『日本書紀』に水飴の記述が見られるそうです。

平安時代にはすでに甘味料として用いられ、江戸時代にはお菓子として普及していました。

もしかしたら神社の参道の屋台で、飴色の水飴が売られていたかもしれません。

来年の初詣には、色とりどりの屋台がならび、たくさんの人でにぎわう景色を見たいと心から思います。

今は一日も早い収束を願うばかりです。

今年も「季節で楽しむ日本の色」をよろしくお願い申し上げます。

 

 

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/

 

色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2175

 

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