「水を分けなさい、わが子よ」

「水を分けなさい、わが子よ」
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』:「10 その夜「バランス」は生まれた」から                         ヴィッキー・ウォール
        ヴィッキーさんはスブド世界大会の出店に備える虹色のボトルの大量生産のために大忙しになります。
もちろん、目の見えないヴィッキーさんが実際のボトルの大量生産を自分で行うことはできませんから、ヴィッキーさん自身が持つ情報をいかに効率よく人に伝えられるかが問題になってくるでしょう。
言い換えれば、ノウハウが集中しているヴィッキーさんの能力をいかに効率よく展開できるかにヴィッキーさんの意識のフォーカスが当てられることになったでしょうね。
こういうステップは、ヴィッキーさんの意識の焦点が個人レベルから少しずつ集合意識レベルへ移っていくことを余儀なくしたでしょう。
そういう手順が全体の働きにとって必要だったのかどうかはわかりませんが、物事の起こり方の順序としてはいかにも必然的な感じはしますね。
さてさて、そんななかでヴィッキーさんはますます全体の道具としての洗練度を高めていったのかもしれない。
どうやらヴィッキーさんのなかには本人がまったく思いもよらない事態が熟成し新たな表現を求めていたようだからです。
ヴィッキーさんはなすべきことの指示を瞑想のなかに求めるよりしかたなくなります。
いよいよクライマックスが始まる予兆ですね。
        ——————————————————————–        おまえはいったいどこから来たの、いとしの赤ちゃん?        どこからともなく、ここへと。                        ジョージ・マクドナルド
思いがけないプレッシャーと、差し迫る締切を抱え、一週間に渡る危機の最中にあって、私は安らぎと新しいエネルギーを瞑想に求めました。
その夜の瞑想は、不思議な、しかしすばらしいものになりました。 まずいつものように地上的な事柄から自分を引き離したあとで、ふいに私は、それは美しい、めくるめく色彩の滝に飲み込まれていたのです
その光はまるで、潮の満ち引きのように、寄せては、また、かすかなため息をつきながら返していきます。 光の波がリズミカルに打ち寄せてくるたび、ずっとその中にいたい、という強い憧れが湧き起こり、私の全存在は脈打つような新しいエネルギーと安らかさに満たされ、あらゆる理解を超えた平和に、優しく抱きとめられていました。
第三の目がフルに開き、この世の命令や要求は、もはや私には無縁でした。 それから、今までもう何度も耳にし従ってきた、小さな声がやってきました。 虚ろな洞窟から響いてくるかのようなその声は、こうささやいたのです。
「水を分けなさい、わが子よ」
「水を分ける、ですって」 私はドスンと音をたてて、地に舞い戻りました。
水っていったい何のこと?  たぶん高く舞い上がりすぎて、想像力の罠にはまったのだろうと、私は真剣に取り合いませんでした。 しかし、その次の日も同じことの繰り返し、「水を分けなさい」という命令まで同じで、私はやはりわけが分からず、瞑想からかなり早く戻りました。
そして三日目の夜ともなると、私はまるで寺院の中のサムエルのよう、さすがにその声を無視できなくなりました。 常識の部分では、まだじたばたと抵抗していましたが。
「何を考えてるの。  私はモーゼじゃないのよ。  目も見えなければ、心臓も四十パーセントしか動いてないし、もう六十も  とっくにすぎてる。  私が誰を、どんな約束の地に連れていくっていうの」
私はじっとしていられず、ベッドを抜け出ました。
それからの数時間の間に何があったのか、どうやって「バランス」ボトルが実際に生まれたのか、私には覚えがありません。 分かっているのはただ、別の手が私を導いたということだけです。
次の朝、マーガレットがたずねました。
「昨日の夜、いったい遅くまで何をしてたの。  それに、あの素敵なボトルはなあに」
「さあね」
「さあって、それじゃ何のためにつくったのよ」。
マーガレットは、持ち前の現実感覚を発揮して、突っ込んできました。
「何か使い道があるはずよ」
      『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p76-78)
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【第三の目がフルに開き、この世の命令や要求は、もはや私には無縁でした】……。
それでも、ヴィッキーさんを動かすに至るまでは「水を分けなさい、わが子よ」という声は三回送られなければならなかったのですね。
かくてついに得体のしれないボトルが地上に生み出されたのですね。
いったん生み出されたボトルは自らの道を歩み出すのでしょう。
pari 記
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