『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』を書いたとき、ヴィッキーさんは完全失明の状態ですから、もちろん自分で書いてはいません。
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ヴィッキーさんは記憶の中から物語を手繰り寄せて口述しているのです。
そのため、この本には時系列を示す記述がきわめて少ないという特徴があります。
またその記述法に慣れた読者も、物語の内容に引き込まれるままに、時代背景などはその場その場で適当に想像で補って読むわけです。
むろん、それでまったく問題はないのですが、ときに自然な想像がヴィッキーさんのイメージとはかなりずれてしまう場合もあります。
たとえば、今回ご紹介する挿話は、70代の母親が無事手術を終えて元気に退院してきたことを報せる電話が、40代の友人からヴィッキーさんにかかったきた場面からはじまります。
その電話を受けたヴィッキーさんの応答の様子などから、読者は当然ヴィッキーさんもその友人と同年代なのかと想像してしまうでしょう。
ところがこの挿話には珍しく年代の記述があって、これはヴィッキーさんが21~22歳、つまりホースレー薬局で仕事をしていた頃のことのようです。
うーむ。
この電話の主はヴィッキーさんの同年代の友人の母親というわけでもなさそうなので、ホースレー薬局の顧客として始まった交友でしょうか。
ヴィッキーさんの人間力というか、考えてみるとなかなか不思議な関係ですよね。
25 オーラの飛翔
1939年のある日のこと、電話が鳴り、友達のはずんだ声が響いてきました。
「ヴィッキー、いい知らせよ!」
喜び余って、まるでそのまま歌い出しそうな声です。
「ママがね、戻ってきたのよ。
手術は大成功で、きっと子どもたちより長生きするでしょうって」
うれしさが、そのまま笑い声になりました。
母親は70、彼女は40で、とても仲のいい大家族、夫に先立たれたあとに、たくさんの子をがんばって育て上げた母親に、彼女は深い愛情を捧げていました。
「ねえ、あなたも来てよ」
せっつくように、彼女は言いました。
「これから、ママの健康を祝して乾杯するの。
みんな集まってるから」
「分かった。すぐに行くわ」
花を選ぶのに、ちょっと時間がかかりました。
直感で、ゴールドと濃い青紫のアイリスを中心に、レースのような緑のシダをあしらい、それをマゼンタの紙でくるんでもらいました。
どうしてこの組合せを選んだのかが分かったのは、それから何年もたってからのことでしたが。
それから急いで彼女の家に駆けつけてみると、小さなベッドルームは人で溢れんばかりのにぎやかさ、なにせ大きな家族が全員集合しているのです。
長時間の手術の間、はらはらと気をもんでいた形跡は、もはやどの顔にも見当たりません。
今こうして母親は戻り、すべては順調に運んでいるようでした。
それから私の手にもグラスが手渡され、みんな一斉に乾杯です。
お酒を飲まない私は、口だけつけて、お相伴にあずかりました。
白い大きなベッドの母親を、喜びにはち切れそうな顔が取り囲み、一瞬も黙って放ったらかしてはおけないようでした。
乱れてもいない髪を額から払いのけてみたり、しわ一つない真っ白なベッドカバーを丁寧に整えてみたり、十分ふかふかした枕をもっとふかふかさせてみたり。
それはほんとうに喜びの時でした。
私はベッドの脚の方に立っていました。
なにしろその場所以外は、隙間なく愛の輪がベッドを囲んでいましたから。
私が微笑みかけると、彼女は少し疲れたような笑みを返してきました。
これほどの興奮の渦にもまれては、当然と言えば当然でしょう。
そして彼女の関心がまた子どもたちに戻ると、私はシーツの上に置かれた手の方へぼんやり視線を動かしました。
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(273-274)
何かが起こりそうな気配ですね……。
pari 記