前回の「密陀僧」に続いて、今回も知らない色の名前を取り上げます。
シリーズ化しそうです。
「赭」
まずこの文字、読めませんでした。
「そほ」と読むのです。
意味は赤土のこと。
赤土を焼いて作る顔料のことで、縄文時代から存在していたという、最も古い色なのです。
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黄色みを帯びた少し暗い赤です。
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古代において赤い色というのは多くの場合、魔除けの意味を持ちます。
邪悪なものに打ち勝つ色です。
太陽や炎、血液など、エネルギーと生命力を感じさせるのは、古代も現代も同じこと。
古墳時代には、石室の多くに赤い色が使われました。
ところで、ちょっと面白い情報を見つけました。
民俗学者の柳田國男が執筆した『遠野物語』に出てくる河童は、赤い色をしているそうです。
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「遠野の河童は面の色赭(あか)きなり」という記述があります。
ふつう河童といえば緑色をイメージします。
でも度々この物語に登場する河童は赤い色。
昔、飢餓で子供が命を落とすことが多かった東北の地、遠野。
だからこそあえて、命を象徴する色を使っているように思えてなりません。
沖縄版の河童と言えそうなのは「キジムナー」ですが、こちらも赤い色です。
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ガジュマルの大木や古木に宿る木の精霊で、
赤い髪をしていて全身が赤く、子どもくらいの背丈だそう。
人間にさまざまないたずらを仕掛けてきて、
赤飯に見せかけて赤土を食べさせたりするそうです。
遠野の赤い河童に比べると、なんだか陽気な感じがします。
日本の色名で「赭」の文字を使った色が他にもあります。
「真赭」で「まそほ」と読みます。
赭よりは明るく、赤みが強い色です。
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天然の良質な朱砂(しゅしゃ)から作られた色。
奈良時代前期に生まれた色で、赤土から作られた赭に対して、
より純度の高いことを強調し「真」の文字を使ったとされます。
また、この文字は音読みでは「しゃ」と読みます。
代赭色(たいしゃいろ)という色名もあります。
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昔、中国山東省の代州というところで採れる赭土は、
良質な顔料になりました。
その代州赭土の名前が簡略化し
「代赭色」になったということです。
「代赭色」は「赭」よりも濃い色みで強い橙色。
茶色に近い、強い色です。日本画の顔料として多く使われています。
このようにまだ知らない日本の色名が存在します。
深堀りすると、民話や産地の話など、さまざまな事柄につながり、おもしろいものですね。
秋の夜長に楽しめます。
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鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
また、シンガーソングライターの一面も持っています。
6月に初のオリジナルアルバムのCDをリリースしました。
作詞作曲はもとより、ジャケットのイラストも自身の作品です。
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「烏兎匆匆」
全7曲入り/1500円(税込)
こちらからオンラインで購入できます。
https://reiko-ayusawa.com/
当分の間、送料無料です。
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2232
https://www.colordic.org/colorsample/2278
https://www.colordic.org/colorsample/2234