ヴィッキーさんの『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』の本のなかには、よく考えれば“不思議話”としか言えないような挿話がいくつもでてきます。
https://artbeing.com/cd_book/aurasoma1/BKJ02.html
でも、そんな話もヴィッキーさんの話しぶりで、なんとなくいかにもそんなこともあるのだろうと思われてしまうところがあります。
ヴィッキーさん人柄によるものなんでしょうね。
そういう普通の意味では、とても不思議な話はこの本にはいくつも出てきますが、でもこのブリーダーの女性がしてくれた話は、なかでもかなり極めつきの“不思議話”です。
その話を女性が最初に伝えた相手の獣医師は、その話を聞こえなかったことにしたようですし、それ以後彼女は自分の夫にすら話せなかったというのも納得できる感じです。
この挿話は「戦争の最中のことで」「ウエスト・ドレイトンにいた頃のこと」というのですから、ヴィッキーさんはまだ20代後半か、せいぜい30代前半です。
この挿話の話し手は年配の女性だと思われますが、でもこの話を聞いてもらいたくて、ふだん付き合いのあるホースレー薬局に来たのでしょうね。
おそらくヴィッキーさんに聞いてもらいたくて。
このオナーという女性は、ヴィッキーさんならこの話をちゃんと聞いてくれる、という感じをふだんから持っていたのでしょうね。
相手の話に耳を傾けられるキャパシティというのは、必ずしも年齢には関係がなく、しかも相手にはそれが自然に伝わるものなのでしょう。
では、若いヴィッキーさんが聞いた、お話の後半をお届けしましょう。
オナーがそれから語ってくれたところによれば、その子犬はどうやらおっぱいを吸う気がないようで、定期検診に回ってきた獣医もそれを見て、こう言ったそうです。
「もう死にかけてますから、私が間引いてしまいましょうか。
他の犬たちにも、もっとゆとりができるでしょうから」
「でも私は断ったの」彼女は言いました。
「もしかしたら、って思ってね。
そりゃ、彼の言う通りだろうとは思ったけど」
次の日も改善の兆しはなく、例の子犬はさらに弱ってきて、いよいよ終わりも近いようでした。
「それで、私はその子を手ですくい上げたの。
他の連中に押し潰されないようにと思って。
もうほとんど息をしてなかったんだけど。
で、そのときなのよ。
急に後ろに人の気配を感じたのは。
それがおかしなことに、警戒心なんかは全然湧いてこなくてね。
それも変なんだけど、それより何より変なのが、辺りがしんと静まり返っていたことよ」
普通なら足音がすれば、それがたとえ門の前までだろうと、何百という犬が吠えたてずにはおかないはずで、そのうるささ、ものすごさは私も体験ずみでした。
オナーは先を続けて、
「それで私はその人の方を振り向いたんだけど、いったい話をしたのかどうか、どんな人で何を着てたとか、思い出せないの。
全然印象に残ってないのよ。
ただその人はこっちに手を差し出したから、私はそれを見て、はい、とばかりに子犬を手渡したのよ。
どうしてか分からないけど。
やっぱり辺りはしんと静かだったわね。
で、気がつくとあの子が腕のなかに戻ってたから、そのままそっとベッドに戻してやったの。
それでひょいと顔を上げてみたら、そこにはもう誰もいなかったのよ!」
彼女は食い入るように私を見ました。
「さすがに私もすぐ家に帰って、ブランデーでも飲んだ方がいいと思ったわ」
それから少し黙っていましたが、
「これはただごとじゃないって気がしたんだけど、誰にも話せなくてね!」
それからオナーが餌をやりに戻ったところ、驚いたことに、例の子犬は他の子犬に負けない勢いで乳房にむしゃぶりついていたということ。
次に獣医がやってきたとき、彼は、可愛いわが子を一匹なくして、母親は気の毒にというようなことを言ったらしいのですが、
「だから、あの子は助かったって言ったんだけど、それ以上話せる気はしなくてね。
私、夫にだって言ってないのよ。
もし話してたら、もう間違いなく病院送りだもの」
そう言うと彼女はついに笑い出し、私の反応をうかがうようにこちらを見ましたが、私は何も答えませんでした。
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p266-267)
【そう言うと彼女はついに笑い出し、私の反応をうかがうようにこちらを見ましたが、私は何も答えませんでした】
この場面でこういう態度を取れる20代の女性というのは、普通はちょっと考えられませんね。(*^_^*)
pari 記