私はとうとう我が家に帰ってきた
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』:「5 薬屋」から ヴィッキー・ウォール
ヴィッキーさんのこの本は語りおろしだからでしょうか、じつに視覚的効果の高い文章ですね。
本当にまるで映画を見ているみたいに、その部屋の暗さ、温度、ときには匂いさえもが感じられるような気がしてきます。
なかでもここしばらく生家から離れて不安定な場面が続いてきましたから、このホースレー氏の調剤薬局にたどり着いた場面は、思わずお祝いを言いたくなりますね。(^^)/
年齢は書かれていないのではっきりしませんが、まだ十代の少女なのでしょうか。
本当はどれほど心細かったことか。
それとも信仰心の深いヴィッキーさんにとっては、生家を離れて一人生きていく時間は若々しい希望と冒険に満ちた時代だったのか。
当時のロンドンは、十代の家出少女を許容できる社会だったのでしょう。
未成年の少年少女が、別に当局の保護下に入るというのではなく、何とか仕事を見つけて自前で生存できる社会だったのでしょうね。
そういう物語は、ただそれほど一般的に知られていないだけで、まだまだ地球上の多くの地域で起こっていることなのかもしれませんね。
それはともかく、われらのヴィッキーさんは本来いるべき場所にやっとたどり着いたようです。
——————————————————————– 大きな男の人が、スツールから腰を上げました。 ホースレーです。 百九十センチもある、痩せた、しかし笑顔の可愛い人で、グレーの瞳が暖かく私を迎えています。 私は思わず彼ににじり寄っていました。 間違いありません。 私はとうとう我が家に帰ってきたのです。 ブルックボンドのお茶は、今や神々の美酒に変わり、第三の目が生き生きと活動していました。 そしてもし、第四の目があったとしたら、それも活動していたに違いありません。 というのも、何とも嫌な匂いに気づいたからです。 部屋の隅には、二匹の猫が満ち足りた顔で座っています。 彼と私の間には、最初の最初から、言葉を交わす必要などないようでした。 彼の目が、にっこり笑うと、
「これをかいでごらん」
といって、手にした枡を私に差し出しました。
「これは、吉草根なんだよ」
それは、猫の糞の匂いそっくり。 匂いはひどいが、吉草根は精神安定剤として広く使われているということを、私はそのとき初めて知りました。 二匹の猫は、これでめでたく無罪放免となったのです。
そして当然のなりゆきのように、私はホースレーの所に住まいを移し、三人で過ごしたそれからの数年は、小春日和のように心地よく、その間にたくさんのものを吸収しました。 それは私にとって、すでに知っているものをもう一度学び直しているかのような時期でした。
まもなく私は、ちょっとした奇跡に巻き込まれている自分を発見することになりました。 夜中の三時になっても、まだまだ元気に実験に取り組んでいたのです。 しかし空気には切迫感があり、戦争が問題を持ち込んできました。 乳状液をつくるためのオイルや、咳止めシロップに使う砂糖が不足し始め、薬剤師への配給も過去の慣行に従って、厳しく制限されるようになったのです。 当時は、巨大な雪花石膏の乳鉢と乳棒は明らかな必需品で、ほとんどの錠剤や乳剤や調合薬は、店内でつくられていました。
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p37-38) ——————————————————————–
ヴィッキーさんは、ハーブの世界と実験が好きですよね。
それをやっているときが、彼女にとっては一番何も考えなくてもいい時間だったのだと思います。
やっぱり、人生ってすでに書かれた小説のようにすべて決まっているんじゃないか、と思われるときがありますよね。(^_-)
pari 記
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