ニューアース その8

ニュー・アース -意識が変わる 世界が変わる-/エックハルト・トール ¥2,310 Amazon.co.jp
オーラソーマで「ニューアース」(エックハルト・トール著)を読み解く。
「意識の鍵」であるオーラソーマを読み解くヒントとして、シリーズでお送りしています。
あるいは「ニューアース」でオーラソーマを読み解く、とも言えるかもしれませんが、「意識の鍵」を手にするヒントとしていただければと思います。
今回は、第5章「ペインボディ──私たちが引きずる過去の古い痛み」についてです。
これまでの章で、エックハルト・トールはエゴとは何かということについて解説してきています。
「エゴという間違った自己のメカニズム」(2章)、「エゴを乗り越えるために理解すべきこと」(3章)、「エゴはさまざまな顔でいつの間にか私たちのそばにいる」(4章)。
そして、第5章はペインボディについてです。
なぜエックハルトが、これまでエゴについてこのように詳しく述べているかというと、エゴが私たちを不幸にしている原因だからです。
私たちが安らかな気持ちでいられない、自分らしくいられないのはどうしてか? 
それは、エゴが作りだした物語に私たちが巻き込まれているからで、それらのエゴを抜けだせば、幸せはそこにあるのだ、と彼は言います。
自分のエゴがこの地上に地獄を作りだしていて、自分ではそれとは知らずに苦しみを作りだしている。
それが無意識な生き方であって、そのエゴに気づくことで、今ここにある幸せに気づくことができるのです。
生きる秘訣、すべての成功と幸福の秘訣は、次の言葉で要約できる、と彼は言います。
「生命とひとつになること」
「生命とひとつになることは、今というときとひとつになることだ。 そのときあなたは、自分が命を生きているのではなく、生命があなたを生きているのだと気づく。 生命が踊り手で、あなたが舞踊なのだ」

さて、そこで今回のペインボディについてです。
このペインボディについては、ラハシャの「ハートからのカウンセリングスキル」でも学ぶことです。
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いかに自分自身の、そしてクライアントのペインボディを理解し、それに対処して、解消していくかということはカウンセリングにとっても大切な要素ですし、オーラソーマを学ぶ上でもこの理解は大きな助けになります。
このペインボディについて理解することで、不幸の原因、源がよくわかります。
なぜなら、このペインボディこそが不幸を作りだしている源でもあるからです。
しかも、そのペインボディの食べ物はまさにその不幸なので、自分のペインボディに無意識でいることは、不幸を求めて生きていることにもなってしまいます。
では、ペインボディとは何なのか?
ペインボディとは、ほとんどすべての人が持っている古くからの感情的な苦痛の集積、ネガティブな感情のエネルギー場のことを言います。
ネガティブな感情というのは、身体に有害で、バランスのとれた安定した機能を邪魔する感情のことをいい、恐怖、不安、怒り、悪意、悲しみ、憎しみ、憎悪、嫉妬、羨望などのことです。
それらは身体を流れるエネルギーをかく乱し、心臓や免疫システム、消化、ホルモン生成などを妨げます。
そして、これらは当人だけではなく出会う人びとに伝染し、連鎖反応を通じて無数の人びとに影響します。
父親が会社でいやなことがあった日に、それを家に帰って妻にやつあたりし、その妻である母親は子供にやつあたりし、子供はそばにいた猫を蹴飛ばす、というような連鎖です。
それらのネガティブな感情をひっくるめて「不幸」というのだと、エックハルトは定義しています。
それなら、幸福になるにはポジティブな感情になればいいのではないかということで、ポジティブシンキング、というのが流行っていたりします。
しかし、エゴが生み出すポジティブな感情と、「大いなる存在」とつながった本来の状態から生じるもっと深い感情とは区別しなければならない、とエックハルトは警告しています。
つまり、エゴが生みだすポジティブな感情の中には、すでに反対物が含まれているので、エゴの期待通りにならないと、瞬時にその反対物に変化するからです。
例えば、エゴが愛と呼ぶものには独占欲や依存的な執着が含まれているので、相手が期待通りにならないと、あっというまに愛は独占欲や依存となって姿を現し、そこからいろいろと面倒なことが起こります。
では、その不幸の原因となるペインボディを作らないようにするにはどうすればよいのでしょうか?
オーラソーマの解決策はあとに書くとして、ここではまずエックハルトの解決策を説明します。
エックハルトによると、理論的には、ネガティブな感情が湧いたときには、きちんと向き合ってその正体を確認し、その感情を解消して、あとに痛みが残らないようにしておく、ということになります。
「理論的には」・・・というのは実際には非常に難しく、とくに子供は(子供に限りませんが)ネガティブな感情があまりに強いと、どうすることもできなくて、それを感じないようにする傾向があります。
そして、その子供の頃の防御メカニズムは、そのまま成人後もひきずることになります。
そのようにきちんと向き合い、受け入れ、そして手放すという作業がなされなかったネガティブな感情は痛みとなり、その痛みが積み重なり、身体の全細胞で活動するエネルギー場になります。 そこでペインボディが形成されるわけです。
このペインボディを形成するのは子供時代の痛みだけではなく、思春期や成人後のつらい感情も付加されていきます。 その大半はエゴの声、マインドセットによって作りだされます。
しかも、このペインボディというのは、単に個人の人生で形成されるだけではなく、非個人的な性格をも持ち合わせているというのだから、ペインボディというのは奥深いものがあります。
つまり、これまでの人類の歴史のなかで行われてきた部族闘争や奴隷制、略奪、強姦、その他の暴力に彩られた人類の歴史を通じて、数え切れない人びとが体験してきた痛みもそこには含まれているというのです。
ですからある意味、この世に生まれる新生児はみな、すでに感情的なペインボディを持っている、ということになってしまいます。
ところがここで面白いのは、「どちらかといえば重いペインボディを持った人たちの方が、ペインボディが軽い人たちよりも霊的(スピリチュアル)な目覚めに達する可能性が大きい」とエックハルトは言っていることです。
つまり、そういうペインボディの重い人たちの多くは、自分の不幸にもう耐えられないという段階に達し、それが目覚めの強い動機になる、というのです。
「なぜ苦しむキリストが、苦悶に歪む顔と無数の傷口から地が吹きでている身体が、人類の集団的な意識にとって、かくも重要なイメージとなっているのか? (とくに中世に)おびただしい人びとがキリストのイメージに深く動かされたのは、自分自身の中に共鳴する何かがあったからで、彼らは無意識の中にキリストに自分自身の内なる現実──ペインボディ──の表現を見ていたのだろう。(中略)
キリストは人間の原型であり、人間の苦痛と苦痛の超越の可能性を体現していることができる」

まさに、オーラソーマのレッドが「目覚めのエネルギー」とされる理由がここにありますね。
それはともかく、ペインボディが怖いのはここからです。
続きます。お楽しみに。
尚 記
     
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