それでうまくいくなんてありえないわ
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』:「5 薬屋」から ヴィッキー・ウォール
やっと自分の古巣のように感じられるホースレー薬局に受け入れられたヴィッキーさん、どれほど嬉しくまた安心したことでしょうね。
そしてホースレー氏から教わる知識をまるでスポンジが水を吸い取るように吸収していきます。
それはある意味でヴィッキーさんにとってはすでに知っていることを再び学び直すようなことだったのかもしれません。
日常的な仕事の実質部分をどんどん覚えていくので、やがて彼女が一人でも日常業務をこなせるようになっていきます。
そしてついに、ヴィッキーさんはホースレー薬局で仕事を任されるときがきます。
ホースレー薬局は現代のドラッグストアのような、メーカーが開発した薬品を並べて売る薬局ではなく、自分が原材料から手に入れて製剤する調剤薬局なんですよね。
どうやら当時のお医者さんにも薬として卸していたようです。
その製薬の仕事を任されたのですから、責任の大きさに見も引き締まる感じだったでしょうね。
ところが何ごとも人生はスラスラとばかりは進まなくなっているものです。
山あり谷ありですよね。(^^;)
——————————————————————– 毎週月曜日、私たちは、その地域にいる大勢の医者へ届ける薬の調合をすることになっていて、貴重なオイルが、このときに使われました。 乳剤は調合が難しく、些細な手違いが命取りになりかねないので、いつもその前には沈黙のうちに祈りを捧げたものです。 そしてついに、すべての過程が私に任される日がやってきました。 私はおぼつかない手つきで、苦労しつつ、一つ一つの手順をこなしていきました。 ところがあろうことか、貴重なオイルの入った乳剤は、ものの見事に分離してしまったのです。 ドリスは、それを見、私を見、同情の舌打ちをしました。 しかしなんという偉大な魂でしょう。 小言一つ言うでなく、ただ彼女は優しくこう言ったのです。
「よくあることよ。肉屋だって、一度は自分の手を切るものなんだから」
それでも、私の気持ちはおさまりません。
「どうしようもないんだから」またドリスは言いました。
「捨てたらいいわ」
それは、どうしてもできません。
「しばらく、おいておいてもいい?」
私は奇跡を祈ることにし、とりあえず、片付けなくてはならない仕事に戻りました。
次の朝、調剤室に入る前に、私はさっそく、一リットルビンに入った例の液体に目をやりましたが、一夜の奇跡は起こっていませんでした。 私はがっくり滅入りましたが、それでもまだ捨ててしまう気にはなれませんでした。
そしてその夜はまさしく、祈りと、血と汗と涙の不屈の努力の夜となりました。 私の確信は打ち砕かれ、無駄になったオイルが、良心に重くのしかかっています。 優しいホースレーが、いくら理解を示してくれても、かえって罪悪感がかきたてられるばかり。 私はうわの空で食事を終えると、ふらふらと片付けの終わった調剤室へと戻っていきました。 と、突然、何の理由も脈絡もなく、ある考えが頭にひらめいたのです。 私は例の液体にあるものを加え、ビンを激しく振りました。 その結果、薬学界のどんな人も処方したことのない、前例のないものが生まれたのです。 これについて、ここでこれ以上深入りはしませんが、のちになってある同僚にこの話をしたところ、返ってきた言葉はこうでした。
「あなたは確かに実験精神旺盛だけど、それでうまくいくなんてありえないわ」
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p39-40) ——————————————————————–
ノーベル賞級の大発見だって、ふとした実験上の間違いから起こることがよくあるみたいですよね。
人間の経験的な知識の集積が人類の文化を築いてきたのでしょうが、しかし合理的に類推されることばかりから新しい発明発見がなされるわけではありませんものね。
限界を超えたことを願ったときに閃きには、なにかそれなりのエネルギーがあるのかもしれません。
pari 記
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