ルドルフ・シュタイナーの「天使と人間」その5

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前回までは、人類の進化にあたって、天使がどのような役割を果たし、どのように人間に働きかけているのかということを見てきました。
シュタイナーの人智学の考え方によると、天使、大天使などは人間よりも進化した存在であり、人間のアストラル体を通して私たちを導いているのだということでした。 そして、人間がそのことを知るには「意識魂」を発達させる必要があるのだということ。
では、天使は私たちに何を教えようとしているのでしょうか?
それは「一人ひとりの人間が、他の人間のなかに隠された神性を見るようにする」ということなのです。 人間は単に動物が進化したものではなく、神性の似姿だというのです。 「私は神なり」ということでもあるのでしょう。
また、「絶対的な宗教の自由」についても教えているようです。 この自由があれば宗教戦争もなくなることでしょう。
そして「宇宙の霊的な本性についての洞察」。 つまり霊的な視点から人生を考えない限り、事実の真の意味を理解することはできません。 霊的な世界に気づくことが、私たちが本当に目覚めた人生を生きるためには大切なのです。 霊的な世界に気づかない限り、私たちは目覚めていると思いながらも、意識の面では眠りこけて生活しているようなものです。 つまり、夢のなかで目覚めていると思っているに過ぎないのです。
精神科学(人智学)によって私たちのなかに霊的な世界との正しい関係が築かれることによって、本当に目覚めた人生が可能になってくるというのがシュタイナーの主張です。
精神科学によって意識魂を発達させることによって「天使は私たちのアストラル体に何を行うか」という霊的な事実を観察できるようになります。 そうすることによって私たちは「目覚めた人間」になることができるというのです。
では、のように「目覚めた人間」となるようにするにはどうすればよいのでしょう。
シュタイナーはこのように書いています。
「通常の目覚めた状態とは、眠りから覚めることを意味します。 それと同じように、霊的な世界に目を向けることが、通常の目覚めた状態から更なる目覚めにほかならない」のです。
「私たちは様々な事柄に注意を向けることができます。 私たちは、すぐにでも目覚めた状態を始めることができるのです。 そうすれば、基本的には私たちの人生で、驚嘆すべき出来事の起こらない日など一日もない、ということに気づくはずです。 逆にいえば、人生のなかにある一日において、驚嘆すべきことが何も見つけられないとしても、私たちはそれを見逃しただけなのです。
夜、自分の人生を振り返ってみてください。 みなさんはそのなかに小さな出来事、大きな出来事、あるいは中くらいの出来事を見出すことでしょう。 こうした出来事に関して皆さんは、「それはまったく驚くべき方法で生じた」と言うことができるはずです」

シュタイナーはここで何を言いたいのでしょうか? 「まったく驚くべき方法で生じた」とはどういう意味なのでしょうか?
つまり、こういうさまざまな出来事は、天使の働きによって生じているのだ、といいたいのではないでしょうか。 ふだん当たり前に思って見逃していることのなかにも、実はそこに天使の働きがあるのだ、と。
そのように日常のものごとを見直してみると、そこには見えざるものの導き、つまりは天使など霊的なものの導きがあるということのように思えます。
私たちはふつう目に見えるものを見ていて、目に見えないものの間の空間には何もない、せいぜい空気があるだけだと考えがちです。
しかし「リンゴはなぜ落ちるのか」というごくふつうの出来事のなかに、それは「まったく驚くべき方法で生じた」ということを洞察したニュートンは万有引力の法則を発見しました。
テレビがつき、携帯電話が使えるということは驚くべき事実です。
それは目に見えない空間にも電磁波が飛び交い、それらの映像や言葉もそれらの空間に存在しているということを意味します。
同じように、そこに霊的な存在、天使のような存在の働きがあっても、それは不思議ではないかもしれません。 目に見えないからといって、それは存在しないことの証明にはなりません。
ごく偶然だと思っていたことのなかにも、実は天使の働きはあるか
もしれないのです。
そのように考えると、ごく当たり前の偶然ように思えた日常も、「まったく驚くべき方法で生じた」出来事だったかもしれないのです。
「ある霊的な存在たちが人間を通して進化できるのは、人間がとも
に進化の道を歩むからなのです。 天使たちは人間のアストラル体のなかで、単に遊戯をするためではなく、あることを達成させるため
にヴィジョンを発展させます。 しかし、それは地球の人類の内部で達成されなくてはなりません」
「天使が与えてくれるヴィジョンが人類のなかで現実のものとなることによってのみ、天使の行為は遊戯ではなく、真剣なものになるのです」

ふとひらめいたり、思いついたことやインスピレーションのなかにも、天使の働きがあるのかもしれませんね。
そういうことにも目覚めている、気づいていることが、目覚めた人間の条件のようです。
このように人間が目覚めることによってはじめて、天使は人間を通して、人間と共に進化の道を歩んでいくことができるようです。
尚 記
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