ルドルフ・シュタイナーの「天使と人間」その4

シュタイナーの天使論 その4です。
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天使とは、人間に対して「霊我」というものを形成することを指導している存在である、ということまでは、前回お話しをしました。
具体的には、天使は「人間のアストラル体の中でヴィションを形成している」とシュタイナーは言っています。
そのヴィジョンとは「未来の理想を呼び起こす」ことです。
その未来の理想とは何かというと「将来、自分のかたわらにいる他の人間が不幸な状態にあるなら、いかなる人間も心安らかに幸せを享受してはならない」というものです。
これはまさに菩薩が仏道を求めるときに立てる四つの誓いのひとつと同じです。
その誓いというのは「衆生無辺誓願度」といいますが、地上のあらゆる人々をすべて救済するまで自分は涅槃に赴かない、という誓願です。
そう考えると、天使というのは仏教では菩薩に近いのかもしれません。
それはまたフランスの人権宣言の「自由、平等、友愛」の友愛にも共通します。
つまり「ここでは、物質生活における社会の状態に関して、絶対的な友愛の衝動が、人類の絶対的な一体化の衝動が──つまり、正しく理解された友愛の精神の衝動が支配しています」ということになります。
これは現在の物質主義に対して、人類はみなひとつであり、戦争を無くし平和をもたらそうという思想にもつながります。
さらにそれだけではなく、天使はそのようなヴィジョンを通して「未来では、一人ひとりの人間が他の人間の中に隠された神性を見るようにならなければならない」という目的を目指しているというのです。
これは仏教にある「一切衆生悉有仏性」(すべての人には仏性がある)という言葉に通じるものがあります。
つまり人間とは単に動物が進化したものではなく、そういう神性、仏性を備えてる霊的な存在だということを表しています。
そしてさらに第三の衝動として「思考を通して霊へと到達し、思考を通して深淵を超越し、霊的なものの中での体験へと到る可能性を人間に与える」こと。
これらの三つのことを天使は人間のアストラル体で行っているというのです。
では、天使はどのようにして、人間のアストラル体での仕事をしているのでしょうか?
そもそも天使がそのようなことを人間にしているのなら、私たちはどうしてそのことに気づかないのでしょうか?
シュタイナーに言わせれば、それは私たちが目覚めているにもかかわらず、眠っているからだ、ということになります。
つまり、私たちの意識魂が十分目覚めていないので、アストラル体がこのように天使によって使われていることに気づかないだけであって、意識魂が高められれば、そのような仕事を天使が行っていることを知ることができるというのです。
「人間は意識魂、つまり意識的な思考を通して、純粋に“天使がどのようにして人類の未来を準備しているか”を理解するようにならなくてはならない」と言うことができる、とシュタイナーは言います。
そして、このように天使が欲している人類の未来を人間が自覚し、認めることによって、それは人間自身の智恵の財産になる、ということです。
「ある霊的な存在たちが人間を通して進化できるのは、人間がともに進化の道を歩むからなのです。
天使たちは人間のアストラル体の中で、単に遊技をするためではなく、あることを達成するためにヴィジョンを発達させます。しかし、それは地球の人類の内部で達成されなくてはなりません。
意識魂に到達した後、人間が意識的に全体に関する事柄にまったく注意を払わないならば、すべての歴史は遊技になってしまいます。
全体が単なる遊技になってしまうのです。そうなると天使は、進化していく人間のアストラル体の中で遊技をしていることになります。
天使が与えてくれるヴィジョンが人類の中で現実のものとなることによってのみ、天使の行為は遊技ではなく、真剣なものになるのです」

ですから私たちが天使の行為を無駄にしないためにすべきことは、私たちが意識魂を目覚めさせ、気づきを高めて、天使のしていることを知り、意識的になることが必要なようです。
次回に続きます。
尚 記
     
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