鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【鉛色】なまりいろ≫

今年もなんだかあっという間に夏が終わり、秋の風が吹きはじめました。

秋といえば台風のシーズンです。

日本の暦の雑節に「二百十日」(にひゃくとおか)というのがあります。

立春から数えて210日目のことで、今年は9月11日がそれに当たります。

二百十日とは、台風がやってくる「厄日」です。

古来農業において、ちょうど稲が実りはじめるこの時期に、台風が来襲することが重なりやすかったので、注意を促す目安となるものでした。

秋の台風には「野分」(読み方はのわき、またはのわけ)という呼び方があります。

強い風が野山の草を分けるように吹く様子からできた言葉です。

寂寥感のある風流な言葉ですが、台風が来るとなれば、そんな悠長なことは言っていられません。

現代ではゲリラ豪雨然り、野分の言葉が生まれた昔とは違うレベルの台風被害が起こっています。

台風が近づいてくると、空は鉛のような重苦しい灰色の姿を見せます。

今にも雨が降り出しそうな空模様。

海は波が高くなり、暗い色へと変わっていきます。

日本の色名には、灰色(グレー)のバリエーションが多いです。

たとえば同じように見える色でも、そのニュアンスを伝えるために名前を変えたりもします。

白と黒の中間にある無彩色の基本色を、日本の色名では「灰色」と定めています。

木や藁などが燃焼して残った灰の色を指しています。

もしも台風のときの海や空の様子を言葉で表すのなら、灰色ではなく「鉛色」の方が伝わります。

空に垂れ込める重苦しい雲や、不安な感じがする暗い海の色。

もし、あなたが小説家だったら、こちらを使うでしょう?

実は灰色も鉛色もほとんど同じ色で、区別がないくらいなのです。

でも同じ色を違う名前で呼ぶことで、その情景が伝わったりイメージしやすくなったりします。

こんなところにも日本人の色に対する、繊細さとこだわりが垣間見えて感心します。

今年も台風シーズンがやってきましたが、大きな被害がないことを祈ります。

どうぞ気をつけてお過ごしください。

 

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/

また、シンガーソングライターの一面も持っています。
6月に初のオリジナルアルバムのCDをリリースしました。
作詞作曲はもとより、ジャケットのイラストも自身の作品です。

 

「烏兎匆匆」
全7曲入り/1500円(税込)
こちらからオンラインで購入できます。
https://reiko-ayusawa.com/
当分の間、送料無料です

 

色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2290
      https://www.colordic.org/colorsample/2291