今年、もうこの香りに出会いましたか?
秋に黄金色の小さな星のような花をたくさんつける「金木犀」(キンモクセイ)です。
実った稲穂の黄金色、紅葉する楓の葉、甘くなっていく蜜柑の色・・・などなど。
花を見つけるより先にその香りに気づいて、思わずあたりを見まわすことがよくあります。
咲いている金木犀は花が小さいだけにあまり目立ちませんが、散った花が木のまわりに黄金色の円形のじゅうたんを形づくっているのを見るのが好きです。
金木犀は中国が原産でモクセイ科の常緑樹。
9月末から10月初旬にかけて開花します。
千里先まで香りが届くと言われるほど、その芳香は素晴らしく印象的です。
数多くのブランドの香水に使われています。
たとえばクリスチャン・ディオールの「ファーレンハイト」やグッチ「フローラ・バイ・グッチ」、他にもジバンシーやバーバリー、パコラバンヌなど枚挙にいとまがありません。
金木犀は、春の沈丁花、初夏のクチナシと並ぶ「三大香木」と言われます。
調べてみたら、金木犀の名前の「犀」の文字は、動物の「サイ」に由来していることを知りました。
金木犀の樹皮がサイの肌に似ているから、という理由だそうです。
香りの華やかさとサイの皮膚とがかけ離れたイメージで、その対比がおもしろいですね。
ところで、金木犀を中国名では「桂花」とか「金桂」などと呼びます。
金木犀の花を丁寧に乾燥させ、お茶にブレンドした中国の「桂花茶」があります。
他の楽しみ方として、金木犀の花をシロップ漬けにすることもあります。
花が咲いている期間は4~5日と短いので、花を摘み取ってシロップに漬けて一年中楽しむことができます。
他には白ワインに金木犀の花を漬け込んだお酒や、入浴剤にしたり、粗塩を使ってポプリにしたりなど、さまざまな楽しみ方ができるようです。
黄金色の小さな花がたくさん集まって、良い香りとともに目でも秋の豊かさを感じることができます。
ところで、いま日本に生えている金木犀には実がならない、という話があります。
その理由はこんなことのようです。
昔、中国から金木犀が渡来したときのこと。
金木犀には「雄株」と「雌株」があるのですが、より香りの良い、花をたくさんつける「雄株」の方が選ばれたのだそうです。
そして、その金木犀は接ぎ木で増えていき、日本に生えている木は皆「雄株」なのだとか。
ほんとうだとしたら、何本かの金木犀の子孫がいま日本中にあり、秋になるとあちこちが良い香りに包まれる・・・そう考えるとなんだかロマンティックですね。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
色見本参考:
https://www.colordic.org/colorsample/2238.html