鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【花葉色】はなばいろ≫

今日は8月1日ですね。

1日のことを朔日ともいいます。

朔とは新月のことで、日本の旧暦では月の満ち欠けがそのまま「月」のカレンダーのような役割を果たしました。

そのため新月の日は新しい月のはじまりでした。

8月1日を意味する「八朔」というものがあります。

 



ご存じのとおり黄色い実の柑橘類の果物ですが、この名前はちょっと不思議です。

1860年頃に広島県因島の寺の境内で偶然発見された品種でした。

これを見つけた寺の住職が、旧暦の8月1日(今の暦なら8月末から9月)ごろには食べられると言ったことから「八朔」という名前がついたとか。

しかし実際には、そのころにはまだ熟していないので無理なのです。

12月から2月ごろに収穫して1、2ヶ月ほど熟成させてから出荷されるので、食べごろは2~4月らしいのです。

そして「八朔」には、もうひとつの意味があります。

「八朔」とは、昔ながらの風習として受け継がれてきた行事です。

今年2018年は9月10日が旧暦八月朔日に当たります。

このころに、はじめの稲穂が実るのですが、農民の間ではこの日お世話になった人に初穂を贈るという風習があったそうです。

≪田の実の節句≫といって、「頼み」にかけて日ごろのご恩に感謝するものだそうです。

鎌倉時代後期には、この風習が武家社会にも浸透していきます。

江戸時代には徳川家康の江戸入城の日が天正18年(1590年)8月朔日だったこともあり、幕府の重要な日として重んじられるようになっていきます。

知りませんでしたが、お正月の次に大切な日とされたとか。

大名たちは徳川将軍に挨拶に参上し、また花街では芸妓さんや舞妓さんがお得意様に挨拶まわりをしました。

 



この風習は今でも残っていて、正装して茶屋や師匠のところに挨拶に行くそうです。

実際「八朔」は農家の「三大厄日」のひとつで、台風が来ることが多く田畑に被害が出る時期でもありました。

無事に収穫を迎えたい農民の祈りは、全国各地に「八朔祭」という祭りとして、今も受け継がれています。

 



五穀豊穣を願って行う祭りは「予祝」です。

先にお祝いをしてしまう日本古来の引き寄せの方法と言えるでしょう。

そう考えると、春に食べる柑橘の果物を半年近くも前倒しして「八朔」と呼ぶのも「予祝」的な命名なのかもしれません。

今月の色名は八朔にちなんで黄色の一種「花葉色」をご紹介します。

「花葉色」は織色の名称で、赤味のある黄色ですが山吹色よりは黄色よりです。

 

 

八朔の実の色を思わせます。

経糸(たていと)に黄色、緯糸(よこいと)に山吹色を使い、主に春の衣服に用いられます。

ちょうど八朔が食べごろになる季節の色です。

「花葉色」は、華やかな気持ちにさせてくれる祝祭的な色です。

先のことをお祝いして前向きなエネルギーを呼び込んでみたくなります。

 

 

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。

http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
 

 

 

色見本参考:

https://www.colordic.org/colorsample/2056.html

https://www.colordic.org/colorsample/2225.html

 

 





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