秋に実るものや咲く花には、紫色のものが多いのはなぜなんだろうと思います。
いえ、決して多いのではなく、印象に残るものが多いのかもしれません。
代表的な紫色の秋の実りはなんといっても葡萄、そして艶やかな秋茄子もあります。
紫色をした秋の花は多いです。
双璧を成すのは桔梗(ききょう)と竜胆(りんどう)でしょう。
そして、鮮やかな紫色の実が印象的な、紫式部もはずせません。
ちなみに『源氏物語』の作者の名前とは、無関係なのだそうです。
紫苑(しおん)という素敵な名前を持つ、キク科の花もあります。
秋の代表的な青紫色の花の双璧は、桔梗と竜胆と前述しました。
漢字で書いてみるとさらにイメージが広がります。
桔梗の語源は、乾燥した根が硬いという意味からきています。
根が結実(桔)して硬い(梗)ので、この二文字を使ったのですね。
また「きちこう」という読み方が転じたものという説もあります。
桔梗の花で吉凶(きっきょう)を占ったから、だそうです。
昔の人はいろいろなもので占いをしたようです。
いっぽう竜胆の文字は、可憐な花の姿の割に強そうなイメージなので、気になりました。
それは中国の植物の名前である龍胆(りゅうたん)に由来します。
龍胆は、中国で代表的な苦い薬である熊の胆(くまのい)よりもさらに苦いことからついた名前でした。
なるほど、熊よりも強い龍の胆嚢ってことですね。
これは苦そうです。
竜胆(りんどう)は、葉や茎など全体的に苦いのですが、特に根は大変苦いそうで、薬として用いられます。
今も漢方薬の専門店で取り扱われているそうです。
幻想的とも言える深い青紫の竜胆色。
苦い薬の話でしめくくるには、忍びないので日本文学の話題で締めたいと思います。
清少納言の『枕草子』のなかに、竜胆の印象的な記述があります。
「竜胆は枝ざしなどもむつかしけれど、
異花(ことはな)どもの皆霜枯れたるに、
いとはなやかなる色あいにてさし出たる、いとをかし」
竜胆は枝の張り出しが鬱陶しいけれど、他の花が霜に当たって皆枯れてしまったなかでも、華やかな色合いで咲いているのは、とても趣がある。
こんな意味です。
現代の言い方だと「いとをかし」は「超エモい」でしょうか。
やはり秋に見る紫色は印象的。
今も昔もエモいのです。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
また、シンガーソングライターの一面も持っています。
6月に初のオリジナルアルバムのCDをリリースしました。
作詞作曲はもとより、ジャケットのイラストも自身の作品です。
「烏兎匆匆」
全7曲入り/1500円(税込)
こちらからオンラインで購入できます。
https://reiko-ayusawa.com/
当分の間、送料無料です。
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2042