鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 ≪【いわぬ色】いわぬいろ≫

日本の色名では、時々驚かされる名前に遭遇します。
今回取り上げる「いわぬ色」もそのひとつです。

いわぬ色

いわぬ色の「いわぬ」は「言わない」の意味です。
なぜこんな名前なのでしょう。
それは・・・いわぬ色とは、梔子(くちなし)の実で染めた色のことだからです。
くちなしは「梔子」や「支子」と書きますが、「口が無い」の意味とかけて「言わぬ色」とも呼ばれるようになりました。
昔の人の一種の言葉遊びが、そのまま色名に残っているのですね。
くちなしは、初夏に白い可憐な花を咲かせる低い常緑樹です。

くちなし1

遠くまで届くほどいい香りを持ち、育てやすいことから園芸用の樹木としても人気を集めているそうです。
くちなしの花はその芳香が好まれ、ポプリやウエディング・ブーケなどにもよく使われています。
そのときには、別名の「ガーデニア」と呼ばれるので、こちらを耳にしたことが多いかもしれません。

くちなし2

花の時期は6月から7月ですが、実をつけるのは秋です。
白い花は次第に黄色くなり、10月ごろに赤に近い黄色の実をつけます。

くちなしの実

先端には萼片(がくへん)の名残りで、細い葉のようなものが6本ついています。
くちなしの実は、漢方では「山梔子」(サンシシ)と呼ばれ、多くの効能を持つそうです。
また、和菓子などの色づけにも用いられます。
たとえば栗きんとんは、くちなしの実で色づけしたサツマイモを使うと、きれいな黄色になるのです。
花はいい香りで、実も漢方薬や食品の色づけとして優秀。
まさに非の打ちどころがない植物ですね。
一説によると、実が熟しても割れない(口を開かない)ことから、くちなしという名前がついたといわれています。
この実を染料として染めると、暖かみのある濃い黄色が得られます。
ちょうど山吹色(やまぶきいろ)のような黄色です。

山吹色

山吹はたくさん花が咲くのに、実をつけない植物として知られています。

山吹

古今和歌集に、こんな歌があります。
「山吹の花色ごろも ぬしやたれ     問えどこたへず 口なしにして」
素性法師(そせいほうし)三十六歌仙のひとり。

素性法師

山吹色の衣に、お前の持ち主はだれかと尋ねても答えない。 くちなしで染めた着物だから。
言わぬが花、という言葉があります。
人は口数が多くないほうが魅力的だったり、詳しく知らない方が物事を美化していい方にとらえたりすることがあります。
誰にも語らず、まさに墓場まで持っていくような秘密がひとつくらいあるほうが、魅力的な人生になるのかもしれません。
そんなことをおくびにも出さない、あっけらかんとした明るい黄色には、なにかを決意した人特有の力強さを感じます。
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鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール 有限会社「カラーズガーデン」代表。 英国オーラソーマ社公認ティーチャー。 栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。 中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。 2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。 2006年より公認ティーチャーとして活動中。 http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
———————————— 英国オーラソーマアカデミー資格講座 レベル2 日程 2015年9月19日(土)~22日(祝火)、        10月3日(土)~4日(日)全6日間 会場 栃木県宇都宮市 カラーズガーデン 講師 鮎沢玲子 お申込み・お問合わせ reiko@colors-garden.jp
その他のスケジュールはこちらで確認できます。 http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
色見本参考: http://www.colordic.org/colorsample/2170.html http://www.colordic.org/colorsample/2122.html
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