先日、クチナシの鉢植えを購入しました。
玄関ホールに置いているのですが、甘く良い匂いが室内を満たします。
ほんの小さな鉢植えなのに、植物の力は偉大です。
コロナウィルスで自粛期間中だったので、なおさらなぐさめられました。
クチナシは初夏に白い花を咲かせます。
特に八重咲きのオオクチナシは「ガーデニア」とも呼ばれ、園芸品種として人気があります。
育てやすく、地植えにも鉢植えにも向いているのです。
早春に咲く沈丁花、初夏に咲くクチナシ、秋に咲く金木犀、これらを三大香木と呼ぶそうです。
どの花も季節ごとに目だけでなく、よい香りでも私たちを楽しませてくれます。
神秘思想家であり教育者でもあったシュタイナーは著書のなかで「花を咲かせるのは妖精の仕事だ」と述べていましたが、なるほど納得ですね。
クチナシにまつわるこんな話を思いだしました。
囲碁や将棋盤の脚の形は必ずと言っていいほど、クチナシの実をかたどったフォルムをしているのをご存知ですか。
その理由とは・・・
「対局中に助言など第三者が口を挟むことを禁じる。クチナシは口無しに通ずる」ことからきています。
語呂合わせで生まれた話だと思われますが、なかなか深い示唆に富んでいます。
日本の色名に「梔子色」があります。
クチナシの花の白い色かと思いきや、そうではありません。
クチナシの実で染めた、黄色に近い、明るいオレンジ色です。
クチナシの実にはカロチノイドの一種「クロシン」という物質が含まれており、古くから黄色の着色料として用いられてきました。
今も残っている代表的なところでは、おせち料理の栗きんとんの色付けや、タクアン漬けの黄色がそうです。
無害の天然色素なので、食べ物に使えるのです。
乾燥させた果実の粉末は天然染料として、古くは奈良時代から使われてきました。
「黄丹」(おうに・おうたん)という色を染めるための下染めに用いられていたのがわかっています。
黄丹は皇太子専用の礼服の色で、鮮やかなオレンジ色でした。
江戸時代、梔子色は庶民にも人気のポピュラーな色となりました。
江戸の本草学者であった貝原益軒も、梔子染めの方法を説いていました。
クチナシは花も美しく、香りも良ければ、染料としても使われ、実は漢方薬としても重宝される、まさにマルチな植物。
「妖精の仕事」と説いたシュタイナーも、クチナシがここまで優秀とは思わなかったのではないでしょうか。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2170
https://www.colordic.org/colorsample/2248