そろそろ青果売り場にトウモロコシが出まわりはじめました。
夏に美味しい野菜の代表的なものです。
日本の色名に「玉蜀黍色」があります。
私たちがトウモロコシと聞いてイメージする、明るいオレンジよりの黄色です。
子どものころ、夏休みの思い出とともにトウモロコシがありました。
夏祭りの屋台で買った焼きトウモロコシの香ばしい匂い。
午後の昼寝から起きてきたら、食卓の上には、おやつ代わりに茹でたトウモロコシが載っていました。
日本に伝わったのは1579年(天正7年)と言われています。
ポルトガル船を通じて長崎へ。
コロンブスのアメリカ大陸発見が1492年ですから、それから100年も経たずに、トウモロコシは世界中に広がり、極東の島国である日本にも伝えられたことになります。
玉蜀黍という名前の語源について調べてみました。
当時の日本には、モロコシと呼ばれるイネ科の植物がありました。
それに似ていることから「唐の(舶来の)モロコシ」で、この名が付いたということです。
玉蜀黍色は、江戸時代の安永・天明年間(1772年~89年頃)の流行色でした。
当時は鳶色(とびいろ)や鶸茶(ひわちゃ)といった灰色や茶色の全盛期。
江戸の渋好みのなかにあって、陽気な黄色も好まれたのでした。
日本に伝わったトウモロコシが黄色だったために、この色が玉蜀黍色となったわけですが、実際の実の色には白や茶褐色や、赤色や紫色などさまざまな色が存在します。
多様性という点でトウモロコシは、食糧としてだけでなく、家畜の飼料、加工食品の材料(コーンスターチやトルティーヤ、スナック菓子など)さらにはエタノール燃料にもなるという変幻自在な食材です。
しかも、原産地と起源が未だにはっきりとわかっていないという、謎の多い植物でもあるのです。
ところで、人類の文明にはそれぞれを支えたメインとなる食物が存在した、という興味深い記事に出会いました。
たとえば、インダス文明と長江文明は稲で、黄河文明は大豆です。
地中海沿岸やメソポタミアとエジプト文明は麦で、南米のインカ文明はジャガイモ、中米のマヤ・アステカ文明がトウモロコシということになります。
今では私たちはどの食材も簡単に手に入れることができ、好きなように食べることができます。
子どものころからなんの疑いもなく、16世紀に伝わったトウモロコシを夏のおやつに食べていたのです。
人間の伝播する力も時代とともに進化し、今ならインターネットであっという間に地球の裏側にも届きます。
新型コロナウィルスの感染拡大によって、一時的にせよ移動することを制限された人類が、次はどんな一手を打つのか?
私たちは今、とてつもなく大きな時代の転換点を生きているのでしょう。
艶やかなトウモロコシの黄色は、知ることの楽しさを刺激するイエロー。
新しい知識や概念を消化吸収する力を表す色。
なんだかワクワクしてしまうのは、きっと私だけではないですよね。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2370
https://www.colordic.org/colorsample/2276
https://www.colordic.org/colorsample/2147