これは、私たちに与えられた贈り物なんだ

いよいよヴィッキーさんの幼年時代が終わって、少女次第がはじまります。
ところが、その初日ともいうべき小学校への初登校の日、期待に胸膨らませたヴィッキーさんを待っていたのは予想外の事態でした。
それまで他の子と比較することもなく当然だと思っていたことが、他の子たちにとってはそうではなかったことを知ることになったからです。

ヴィッキーさんの場合ほど衝撃的ではないかもしれませんが、大なり小なり新しい仲間に入っていくことには冒険が伴うものです。
思わず、小学校に入学したころの遠い昔を思い出してしまいました。(^^;)

ふと蘇る子どものころの思い出は、懐かしくも遠い夢のようなものですよね。
当時の少女のヴィッキーさんとしてはショックだったでしょうね。
でも、それはその後のヴィッキーさんの人生の中核を形成する能力に成長していくようです。

ここでもお父さんの存在がヴィッキーさんにとってどれほど大きかったかを感じさせられます。


秘密

その日は、喜びと興奮の日になるはずでした。
8月20日、8歳の誕生日、私はそそくさと、けれども丁寧に紺のスカートと白のブラウスを身につけました。
はじめての学校です。
私の全身は、期待ではち切れそうでした。
けれども、期待は見事に外れ、幻滅と屈辱の黒い雲が私を覆いました。

子どもというのは、ときにはとても残酷なものです。
友達は、あざけりの声とともに、私を追い回しました。
悔し涙が、頬を伝って流れ、突然私は、自分が人とは違うことに気づかされたのです。
それはちょうどお昼の時間で、父は食事をとりに家に帰ってきたところでした。
涙でぼんやりした目で、玄関の父の姿を認めたとたん、私は全力で父に駆け寄りました。
父はやさしく私を抱き締め、なだめてくれました。
父のお腹にしばらく顔を埋めるうち、魔法のような安らぎに包まれ、私はすっかり落ち着きを取り戻しました。

「どうしたんだ」父は、そっとたずねました。

私は二人の友達の名前をあげ、彼らが私を気違い扱いしたこと、私とは遊ばないといったことを伝えました。
父の目が、ふっと笑いました。

「いったいその子たちに、なんて言ったんだ」

私は声を詰まらせました。

「私はただ、あなたたちの周りにきれいな色が見えるわって言っただけよ」



父は私を真剣なまなざしで見つめて、

「それじゃ、パパの周りには、何色が見える?」

私はびっくりしながらも、見たままを言うと、

「ふむ」と、父は言い、茶色の瞳が暖かく微笑みました。

「おまえのまわりにどんな色が見えるか、知りたいか」

そのひと言で、再び太陽は輝きを取り戻しました。
愛する父が、私を認めてくれたのです。

「いいかい」父はさらに言いました。

これは、私たちに与えられた贈り物なんだ
 おまえも、私も、おまえのお祖父さんも、それが見える。
 だが、まだそれを口にする時は来ていない。
 まだ、準備ができてないんだ。
 でも、いつかおまえがそう言っても、誰もおまえを気違い呼ばわりしない日が、
 きっと来るから」

それからいつも別れの前にするように、私の手のひらにキスをし、それをぎ ゅっと握らせました。

「父さんがいつも言っているように、この手のなかに何があるのか、誰も知らないし、
 これは誰にも盗めない。
 おまえと父さんが見る色も同じだ。
 これは、父さんとおまえとの間の秘密だよ

古い魂を持った父は、理解を分かち合う対等の存在として、私に呼びかけていました。

おまえは、遠い先祖のこだまのこだまのこだまなんだ

その当時は、父の言わんとしたことはあまりに大きすぎて、よくわかりませんでしたが、ふさわしいときがきて、それを理解できるようにと、父は私の柔らかい心に種をまいてくれたのです。

当時の私には、手を開き、その秘密の贈り物を分かち合うことができるまでに60年もの年月が必要になろうとは、知るよしもありませんでした。

『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p21-23)



「これは、父さんとおまえとの間の秘密だよ」……。

こう言われて、ヴィッキーさんはどれほど安心したでしょうね。
特別な能力を持つことは、ときには試練を伴うものですね。
たとえ、人にうらやまれるような能力であったとしても。

pari 記
       

 

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