意識と科学 その1

最近「意識とは何か」ということを考えながら、いろいろな本を読むことが多いのですが、そのなかで興味深い2冊の本に出会いました。
一冊は「ダライ・ラマ 科学への旅 原子の中の宇宙」。
ダライ・ラマ 科学への旅―原子の中の宇宙/サンガ ¥2,940 Amazon.co.jp
もう一冊は「心と脳の正体に迫る」天外伺朗氏×瀬名秀明氏対談の本です。
心と脳の正体に迫る 成長・進化する意識、遍在する知性/PHP研究所 ¥1,575 Amazon.co.jp
今回は、この2冊の本をベースに意識について考えてみたいと思います。
ダライ・ラマはチベット仏教の最高指導者であることはご存知かと思いますが、それだけではなく、科学においては長年にわたって、素粒子物理学、宇宙論、生物学、神経科学や心理学を探究し、それぞれの重要な考え方の接点について思索を重ね、彼のいるダラムサラに世界的に著名な科学者を集めて「心と生命」に関する会議を主催したり、デヴィッド・ボームなどの世界最高の著名な物理学者たちとの親交もあります。その長年の知的旅路の報告として、この本を著したということです。
かたや、天外伺朗氏は工学博士であり、犬のようなロボット“AIBO”や、二足歩行の人間型ロボット“QRIO”を開発した後、人工知能と脳科学を統合した新しい学問「インテリジェンス・ダイナミックス」を提唱し、その研究所の所長を務めつつも、瞑想の指導者でもあります。また、最新の物理学と深層心理学と東洋哲学の接点から、多くの著作を書かれています。
両氏とも仏教ないし工学の専門分野で活躍されながら、スピリチュアリティと科学の接点を探求されているところが共通しています。
さまざまな意識に関する本を読んでわかることは、意識をどのように定義するかは、それぞれの研究者の立場によって異なってくるので、「意識」とは何かについてはほとんど一致した見解はありません。
とはいえ、近年の脳科学、量子力学などの著しい発達によって、意識の研究は科学的探求のなかでも最も興味を持たれる領域になりつつあるようで、非常に興味深い仮説が生まれてきているのも事実です。しかし、実際には科学はまだ「意識」という現象を探るに十分な方法論をもちあわせていない、というのが現状のようです。
ダライ・ラマによると、意識による経験はまったく主観的なものであり、第三者の視点──外側からの客観的な視点──に立つ科学の成果はほとんどないと言います。
そこでダライ・ラマは、意識の研究について次のように提案しています。
「瞑想を実践すれば、意識というものの基本的な経験を「つかむ」ことができるようになる。そこからさらに進んで、意識そのものを瞑想による探求の対象にしていくことも可能になる。そこで、仏教の観想的な探求方法と西洋の科学的手法を融合した意識の研究の方法論を確立することが必要だ」と。
「仏教の最大の関心は、苦しみを取り除くことと幸せを追求することだ」とダライ・ラマは言います。
私たちは心理的な面と物理的な面の両方の苦しみを取り除かなければならず、科学は物理的なレベルの苦しみを除くのにとても有益であり、仏教をはじめとする精神的探求や宗教や哲学は、精神的なことや心理的な苦しみを取り除くのに有益だというのです。
つまり、科学だけでは精神的な苦しみを取り除くことはできない、ということになります。
一方、天外氏とSF作家の瀬名氏の対談では「ほ乳類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、微生物、植物、鉱物と分類して、いったいどこまでが意識を持っているのだろうか?」という問いかけからはじまります。 ここでは非常に自由な発想と仮説に満ちた対話が展開されています。
「植物に心があるか?」ということについては、「植物の神秘生活」という本に「バクスター効果」といわれる現象が書かれています。嘘発見器(ポリグラフ)の専門家であるクリーブ・バクスターが、観葉植物のドラセナの葉に電極をつけて、その葉っぱに火をつけようと思い立ったその瞬間、嘘発見器の記録ペンが大きく振れた、という有名な実験です。
植物の神秘生活―緑の賢者たちの新しい博物誌/工作舎 ¥3,990 Amazon.co.jp
また、天外氏が書かれた「大きな森のおばあちゃん」という実話をもとにした童話に次のような話があります。
大きな森のおばあちゃん/明窓出版 ¥1,050 Amazon.co.jp
「干魃のなか、苦しい旅の末にようやく象の群れが緑の森にたどり着き、象が森を食べつくしてしまうかもしれないというときに、年寄りの象は自ら森を離れて干からびた川のところに行って死んでいった。それに続いて、何百頭もの象が自ら死んでいく。そして、胃のなかにあった種が死体の栄養で育って、森がはるかに大きく再生した。象が自ら死を選んだことで、またその森が再生して、素晴らしく大きな森ができた」という物語です。
これに似たようなことは、大自然のなかで繰りひろげられるドラマのなかでよく見られます。そこでは全体が、なにか大きな計らいのなかで動いていて、象も植物もそれぞれの役割を果たしながら生きているのです。
そう考えると、個を越えた大きな意識、ないし知性が宇宙にあまねく存在していて、あらゆる生物がその循環のなかで動いているのだと考えられます。
龍村仁氏が監督する『ガイアシンフォニー』という映画では、「ガイア(地球)がひとつの生命体」だということが描かれていましたが、そのようなことがひとつの実感を持って語られる時代になったような気がします。
次に「心はどこにあるか?」ということについてです。大きく分けて三つの考え方があります。
次回は、そこから述べていきましょう。
尚 記
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