『エコロジカル・ダイエット』

エコロジカル・ダイエット―生きのびるための食事法/ジョン ロビンズ ¥2,548 Amazon.co.jp
今回はちょっと毛色の変わった本をご紹介しますね。
“ダイエット”の本です。(*^_^*)
というと、最近流行のテーマみたいでもありますが……。
現在の日本語で“ダイエット”と言えば、“痩せるための食事療法”みたいな意味ですよね。
でも、もともとの英語(diet)は、①【食事、日常の飲食物、食物、食品】、②【食生活、食習慣】を表すらしいですから、③【ダイエット、治療食、節食、食餌療法】は一種の転意なのかもしれません。
今回ご紹介する『エコロジカル・ダイエット』の原題は、『DIET FOR NEW AMERICA』(新しいアメリカのための食事法)です。
この書名での diet は、②【食生活、食習慣】の意味で使われているわけでしょうね。
翻訳書のほうは、ストレートに「生きのびるための食事法」という副題が付けられています。
一言で言ってしまうなら、“ヴェジタリアニズム(菜食)の薦め”という内容の本ということになるでしょうか。
というか、むしろ今や、そのバイブルとも言える本でしょう。
なにしろ、この本の著者がちょっと変わっています。
著者のジョン・ロビンズは、世界最大のアイスクリーム会社バスキン・ロビンズの社長の御曹司として生まれた方です。
つまり、アメリカの大食品生産機構の中心に生を享けながら、アメリカの食品産業全体を糾弾せざるをえなくなった方……というわけです。
そのロビンズ氏が、繊細な感受性を持った、愛すべき、賢くて優しい、動物たちの実像をつねに背後に背負って、見事なまでの実証精神と緻密な説得力で、現代の食肉産業の実態を報告します。
(ちょうど最近、日本でも口蹄疫騒ぎが大きくなっていますが、ロビンズ氏が報告する悪夢の工場ともいえるアメリカの“食肉工場”の姿は恐ろしいです。(-_-;))
肉食と現代病、食肉工場と環境汚染の因果関係の実証部分は、まさに本書の圧巻です。
そうですねぇ……この本は、今後とも美味しい肉を食べ続けたいとお思いの方は、たぶん……、読まない方がいいでしょう。
逆に……、少し脂肪分を減らしたいのだけれど、ついつい美味しい肉を食べすぎちゃって、という方にはとてもお薦めの本です……。
もっとも、効果がありすぎても、責任は負いませんけどね。(^_-)
たとえば、「仔牛(ヴィール)」なんてご存知でしょうか。 http://www.gourmet-recipe.com/recipe/cat_4_1.htm
さて、“良質のヴィール”がどんなふうに“生産”されるのか……。
ちょっと、立ち読みしてみましょうか。
——————————————————————– 上等なヴィールを探すことは、相変わらずむずかしい。だが、最近オランダ式の製法がわが国に紹介されて、かぎられた量ではあるが、以前手には入ったものより、はるかに良質の子ウシの肉が得られるようになった。……それは……白っぽいほのかなピンク色をしており、たいへん柔らかく、脂肪もきれいで、とてもおいしい。             (ジェームズ・ビアード、『アメリカ料理』)   この「白っぽいほのかなピンク色」をした「柔らかくておいしい」ヴィールをつくりだすオランダの新方式には、秘密がある。この秘密を知って、私は衝撃を受けた。それは私の人生をすっかり変えてしまうほど凄まじい衝撃だった。
昔から美食家が賞賛してきたヴィールの肉が白っぽく、その肉質が柔らかいのは、筋肉がまったく使われていない子ウシの肉だからである。つまり、母乳だけを飲んで育った赤ん坊の肉なのだ。子ウシは、自然な状況では、生まれて数日もたてば草などの固形物を少しずつ食べはじめるから、生まれたときに白っぽかった肉は、すぐにピンク色に変わりはじめる。ヨーロッパでヴィールが珍重されたのは、それが文字どおり稀少で高価な商品だったからである。
しかし、第二次世界大戦後にオランダで革命的方法が考案されて、様相は一変する。それはウィスコンシン州ウォータータウンのプロヴィミ社によってアメリカにも導入された。プロヴィミ社は、今日業界を席巻している「完璧な新ヴィール生産法」を開発してきたことを大いに誇りとしている。だが以下で説明するように、それを誇りに思うことは私にはとてもできない。
……
肉を白くたもちつつ、筋肉を発達させずに、赤ん坊を肥らせるのがプロヴィミ式新ヴィール製造法である。……
生まれたばかりの子ウシはヴィール舎に連れていかれ、「仕切り」と婉曲に呼ばれている場所に入れられる。四か月後に殺されるまで、子ウシはそこで暮らす。もちろん、それ以前に死ななければの話である。かなりの子ウシが四ヶ月を待たずに死亡するほど、仕切の中の生活はひどい。
……
赤ん坊たちは、幅二十二インチ(約五十六センチ)、長さ五十四インチ(約百三十七センチ)の仕切り(一番小さい乗用車のトランクよりもずっと小さい)に一頭ずつ入れられる。 仕切りはとても狭いので子ウシたちはほとんど動けない。……
要するに、子ウシは前後左右に二、三インチしか身体を動かすことができないのだ。……月日がたち体が大きくなると、仕切はますますきつくなり、いかなる動きもほとんど不可能になってしまう。 「特別食の真実」……
「特別食で育てたヴィール」という言葉をはじめて聞いたとき、私は、極上のヴィール”というイメージをいだいた。……
「特別食で育てたヴィール」は、ふつうよりも上等の餌を与えられて育てられた子ウシの肉で、値段も高いのであろう、と私は想像したのだ。……だが、私はまちがっていた。この「特別食」とは、子ウシに肉を白くたもつために、わざと鉄分を大幅に減らして、子ウシを貧血状態におとしいれるものだったのである。……
 
       『エコロジカル・ダイエット』(p108-110) ——————————————————————–
じつは、この子ウシたちがおちいっている窮状はさらに恐ろしいものですが……これ以上を引用するのはやめておきます。(-||-)
pari 記
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