今年は2月4日が立春でした。
日本の旧暦では、節分の翌日である立春が一年のはじまりです。
立春は二十四節気のひとつで、文字通り春の気配がやってきます。
二十四節気をさらに3つに分けたものが七十二候です。
ほぼ5日間ごとにつけられた、季節を表す短い言葉。
立春の最初の候は「東風解凍」で「はるかぜこおりをとく」と読みます。
今年は暖冬傾向で、関東では凍てつく景色を見ることもほとんどありませんでしたが。
東風と書いて「はるかぜ」と読むのにはこんな理由があります。
七十二候が生まれたのは古い時代の中国。
中国の五行思想では、春を司る方角が東なのです。
そのため東から吹いてくる風を「はるかぜ」と呼ぶようになりました。
東風の別な読み方に「こち」があります。
「こち」ではじまる有名な歌が思いだされます。
東風(こち)吹かば 匂い起こせよ梅の花
主なしとて 春を忘るな
平安時代の貴族であり、学者、政治家でもあった菅原道真公の歌です。
優秀で名高く、宇多天皇らに重用されていましたが、謀反を起こしたとして大宰府(福岡県)へ左遷。
その出発の時に読んだ歌だとされています。
ちなみに歌の最後を「春を忘るな」と結んでいるのが『拾遺和歌集』に、「春な忘れそ」となっているのは『大鏡』にそれぞれ収められています。
同じ歌なのに最後だけ違う2つが存在するのは珍しいです。
菅原道真公といえば学問の神様です。
福岡の太宰府天満宮や京都の北野天満宮などに主宰神として祀られています。
この季節には大勢の受験生や親御さんたちが、合格を祈願しに参拝に訪れているはずです。
まさに梅の花が咲くこの時期に、菅原道真公へのお願いが急増するのですから、おもしろいものです。
今回選んだ日本の色は「一重梅」(ひとえうめ)
梅の花にちなんだ色では「紅梅色」が一般的ですが、それよりも少し薄い紅色が「一重梅」です。
鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 ≪紅梅【こうばい】≫
一重咲きの梅の花を思わせる淡い色調です。
色が薄いことを、梅の花びらの重なりが少ないことで表現した、なんとも風流なネーミングだと思います。
今年は珍しいくらいの暖冬で、厳しい冷え込みも降雪も無く、春が持ちどおしいという感覚が薄い。
それでも暖かい東風が吹いたら、きっと表情が緩むのだろうと思います。
そうしたら、こんな色の和菓子を食べよう。
錬りきりか羊羹を、春風のなかで緑色のお抹茶と一緒に。
令和ではじめてやってくる春を、ちゃんと迎えたいのです。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/f29c9f