日本の暦の雑節で「二百十日」というのを聞いたことがありますか。
立春から数えて210日目のことで、ちょうど今日9月1日がそれに当たります。
昔からこの日は台風が多く襲来する日とされてきました。
昔は特にイネの開花時期にあたり、二百十日は農業の厄日。
稲刈り前の被害に注意する目安として、暦に記載されてきたのです。
日本文学の世界でも二百十日は描かれています。
夏目漱石の作品に、1906年に発表された「二百十日」という中編の小説があります。
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阿蘇山に登る二人の青年の会話で構成されています。
二人は阿蘇の周辺各地をまわったあと、いよいよ阿蘇山に登ろうとするのですが、二百十日の嵐に出会い登頂の目的を果たせずに宿に戻ってきます。
これは漱石の実体験から書かれた小説とされています。
熊本での教師時代、1899年8月29日から9月2日にかけて、実際に友人と共に阿蘇の各地を巡っています。
9月1日に登頂を試みますが、嵐に出会い断念しました。
それが122年前のまさに今日なのです。
なんだか感慨深いですね。
もうひとつ、二百十日にまつわる小説でご紹介したいのが宮沢賢治の「風の又三郎」です。
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ある風の強い日、山あいの小さな小学校にひとりの少年が転校してきます。
少年は高田三郎と言い、変わった姿と不思議な言動から、地元の子どもたちに伝説の風の精「又三郎」ではないかと怪しまれます。
三郎が転校してきたのは9月1日。
そしてほどなくして、また転校して行ってしまいます。
少年たちのささやかな冒険の物語が、天候の急変や風の話とともに描かれています。
三郎はきっと風の神の子なのです。
ところで、富山県八尾町で開かれる有名な祭り「おわら風の盆」も二百十日と切り離せないものです。
昨年と今年は残念ながら中止だそうですが、毎年9月1日から3日まで開かれます。
「越中おわら節」の哀愁ある旋律にのせて、坂の多い道を男女の踊り手が無言で踊り続けます。
陽気な夏祭りとは違い、この祭りは静かで洗練を極めています。
もともと台風などの風を鎮める願いを込めた祭りだからでしょう。
無言の踊りが、まるで祈りのように胸に迫ります。
今回の日本の色は「空色鼠」(そらいろねず)を選びました。
かすかに青みのある明るい灰色です。
台風の被害が年々深刻化する昨今、こんなことを書くと不謹慎だとお叱りを受けそうですが、私は台風前後の空を見るのが好きです。
近づいてくる時の不思議な空の色も、去ったあとのドラマティックな雲の形も。
空色鼠は台風が来るのか来ないのか、明るいのか暗いのか、そんな曖昧な空のようです。
字面(じづら)も薄いブルーの毛皮をまとったネズミを連想させて、なんだか楽しくなります。
このあと台風の被害がありませんように。
空のネズミに、風の又三郎にお願いしておきます。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
また、シンガーソングライターの一面も持っています。
6月26日に初のオリジナルアルバムのCDをリリースしました。
作詞作曲はもとより、ジャケットのイラストも自身の作品です。
「烏兎匆匆」
全7曲入り/1500円(税込)
こちらからオンラインで購入できます。
https://reiko-ayusawa.com/
当分の間、送料無料です。
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/b8c8d1