「夏も近づく八十八夜」
そんな歌を知ったのは小学生のころでした。
「茶摘み」のことを歌っています。
八十八夜とは立春を起点として88日目のことで、今年は5月1日となっています。
日本の暦で八十八夜は雑節のひとつで、季節の移り変わりを表したもの。
ちょうど新茶の摘み取りをする時期なので、上記のような歌が生まれたわけです。
ところで、お茶の色と言えばどんな色を思い浮かべますか?
ほとんどの人が煎茶の緑色だと思います。
でも「茶色」って、緑色ではないですよね。
それはなぜなのでしょう。
現在の日本人が一般的に飲む煎茶は、緑色をしています。
いわゆる緑茶です。
この緑茶は意外にも歴史は浅く、18世紀のはじめに京都の宇治で作られるようになりました。
なぜ緑色なのか?
それは、生の茶葉を発酵させずに作る「不発酵茶」だからです。
摘み取った葉を蒸して揉みながら乾燥させます。
それ以前は、お茶の葉を釜で炒る(いる)方法か、摘み取った茶葉を天日で乾燥させてから一部を酸化させる半発酵茶と呼ばれる方法のどちらかだったそうです。
半発酵茶とは、たとえば烏龍茶のようなものです。
お茶を飲むという習慣は、古代から日本にあったわけではありません。
もとは中国にあった習慣が、留学した僧によって日本に伝えられました。
それでもごく限られた一部の人だけであり、お茶が普及して一般に飲まれるようになるのは鎌倉時代以降だと言われています。
古来日本の文化は、奈良時代から中国の影響を強く受けてきました。
当時の中国は「唐」の時代。
日本から遣唐使を送り、言わば文化を輸入していたのです。
その後、中国の国名が宋、元、明、清と変わっても、中国から渡来した品物などに「唐」の文字をつけて「唐物」(からもの)と呼ぶのが習慣となりました。
それだけ唐の影響が大きかったのです。
現代でも、唐揚げ、唐辛子など、唐の文字を冠した名前がたくさん使われていますね。
やっと話が、日本の色名にたどり着くのですが「唐茶」という色名があります。
唐つまり中国から渡来したお茶の色。
炒った茶葉の色、またはそれを煮出した液体の色を指しています。
いわゆる茶色ですが、唐の文字をつけることで「中国渡来の」という意味が付け加えられています。
今年2月ごろから騒がれだした新型コロナウィルス。
これも言わば「唐物」です。
八十八夜の頃には収まっているだろうとはじめはタカを括っていました。
今は1日も早い収束を願うばかりです。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2228