魔法使いの台所の空想画が現実に

魔法使いの台所の空想画が現実に
「錬金術のマスター、ヨーゼフ・ルーテイと『オーロラ社』」より                    

クシュブ・ドイッチマン
       「錬金術」という伝統はてっきり西欧由来のものだと思っていました。
ところが、ちょっと調べてみると、これがけっしてそうではないらしいのです。
試みに、Google先生の代表格である「ウィキペディア」を調べてみるだけで、「錬金術」がとても普遍的な探求だとわかります。
「錬金術」の語義そのものは、次のように解説されています。
————————————  錬金術(れんきんじゅつ、羅: alchemia, alchimia 英: alchemy)  とは、最も狭義には、化学的手段を用いて卑金属から貴金属  (特に金)を精錬しようとする試みのこと。  広義では、金属に限らず様々な物質や、人間の肉体や魂をも対象  として、それらをより完全な存在に錬成する試みを指す。  http://ja.wikipedia.org/wiki/錬金術 ————————————
ところが歴史的にこれがけっして西欧だけのものではないらしい。
2.1 古代ギリシア 2.2 イスラム錬金術 2.3 西ヨーロッパの錬金術 2.4 東洋の錬金術 2.5 中国の錬金術
などのそれぞれの項を読むと、どうやらこの探求は地上全体を覆っているようです。
「錬金術と同様の試みはインド(有名な錬金術師に龍樹がいる)や中国などにおいても行われた。また、タントラ教の考え方も錬金術の影響があるとされる説もある」というのですから、これは精神世界全体に関係するようです。
中でも『心理学と錬金術』を著わした心理学者カール・グスタフ・ユングは、錬金術(を含むいっさいの神秘主義)は、「対立しあうものの結合」をめざしていること、そこに登場する物質と物質の変化のすべては心の変容のプロセスの比喩であり、男性性と女性性の対比と統合が暗示されている、と考えていたようですね。
非常に精神世界的アプローチであることは確かのようですが、いわゆる「錬金術」と呼ばれる核になる探求があったことも事実のようです。
今回は、最後の錬金術師といわれた『オーロラ社』のヨーゼフ・ルーテイ氏の存命中にその“実験室”をオーラソーマ社のレポーターとして訪れたクシュブ・ドイッチマンさんの記事からご紹介しましょう。
では、では「錬金術のマスター、ヨーゼフ・ルーテイと『オーロラ社』」から、その雰囲気を伝える一部をご覧ください。
       —————————————————————— ルーテイ氏は、錬金術という仕事について、あまり大層なことを言いません。 彼は会話と説明と作業を同時に進め、それと同時に内弟子に指示を与えたりもします。 私たちは絶えず動きまわり、ほとんど腰を下ろすことはありません。 あまり活発に動き回るので、彼を見ていると、まるで彼自身の感覚系自体がその瞬間にすべきことを指示しており、あたかも彼はただの器で、未知なる神秘の力によって引きだされた物質的なものと非物質的なものの両方が、彼の中で自分勝手に働いているかのようでした。
突然、なんの説明もなく、彼は私たちを連れてエスカレーターで地下室へ行くと、そこはガラスや金属でできた巨大なコンテナ類が蒸気を吹きだしている実験室でした。 コンテナが湯気をあげて調理しているのを見ると、魔法使いの台所の空想画が現実になったかのようでした
錬金術のマスターであるルーテイ氏は、おおいに意気込んで、彼自身の体験や、数学的正確さで発現するシンクロニシテイやつながり、錬金術プロセスの間に起こる驚嘆すべき完璧な秩序のすべてを私に語ってくれました。 彼の声は、何十年間も自分が完璧に実践してきたこの古代の科学に対する興奮の響きに満ちていました。 彼の意見によると、それはすべて植物と鉱物の癒しの力に関わるものであり、また最高で最も純粋な形での奉仕を植物と鉱物たちに「お願いする」技でした。
こう聞くと、確かに彼はパラケルススやヤコブ・ベーメの伝統を受け継いでいるかもしれないと思えたのです。 しかし、残念なことにルーテイ氏は2004年の夏に亡くなりました。 人類は非常に尊敬すべき人物を失いましたが、彼は私たちに、それまでの仕事と健康と幸せに対するアプローチの方法という贈り物を遺してくれたのです。
彼の話によると、40年前に彼は偶然の出来事から癒しの力の研究に関わるようになり、それ以来研究を続けてきたということでした。 彼の師は、最後の現役の錬金術師のひとり、レゾクルシアン・フラター(ブラザー)・アルバタスです。
先生が死ぬと、私はひとりぼっちになり、『スパギリック&錬金術協会』  でこの仕事を継続でき、かつその意志がある唯一の人間になりました
 その学校を出た他の人たちは、明らかに主としてヘルメスの法則について  語ることを好んでおり、それを仕事とし、その中で成長していくことを望  んではいませんでした」
ヨーゼフ・ルーテイは、錬金術を「聖霊の学校」と呼びます。
「それは、真の錬金術師(アルケミスト)の魂を純化する就任式なのです。  この実験室で行われるすべての出来事は、霊的シンクロニシティと、  秩序と変容のシンプルな反映です。  上にあるように、下にもある。  その魂が錬金術的知識によって成熟して成長した者だけが、この神秘  科学の深みに到達できるのです。  これは『内なる純化』の道であり、これが真の錬金術なのです」   ルーティ氏と、彼の内弟子が容器の温度を調べたり、ひとつの容器から別の容器へなにかの液体を注いだり、片方からもう片方へなにかを注いだりするのを見ていたとき、濃密なエネルギーのようなものが起こりました。
実験室のこの空間に在るすべてのものが特別な波動を帯び、その影響で私は静けさ(信じられないような驚き)と感動の両方で満たされました。 なにか名状しがたいことが私の内面で起こり、それを言葉で説明するのは困難ですが、沈黙と畏敬の念とでも呼べるかもしれません。
それは大聖堂や寺院、または聖地を訪れたときの感じにも似ていましたが、しかしここは“ただの”地下の実験室にすぎなかったのです。
            『リビング・エナジー』Vol.7(p6-7)

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なるほど。
やはり、レポーターとは言っても、ある種の感受性がなければこの記事は書けなかったでしょうね。
ルーティ氏の人となりが伝わってくる感じのレポートでした。
「オーラソーマ」が西洋錬金術の最後の伝統とつながれたのは良かったですね。
pari 記

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