「できれば、やっぱりそちらのをいただきたいのですが」

「できれば、やっぱりそちらのをいただきたいのですが」
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』:「11 大会」から                         ヴィッキー・ウォール
        大忙しのなかから誕生したバランスボトルですが、それが何のためのものかはまだわかりません。
ただこの透明な美しい2層のカラーボトルは、最初から素晴らしい存在感を放射していました。
なのでそれが何のためのものかわからないながらも、ヴィッキーさんは急き立てられるように次々と新しいコンビネーションを誕生させていたようです。
そしてついにスブドの世界大会が開催され、ヴィッキーさんたちは虹色のローションといっしょにこのバランスボトルもお披露目することにします。
ヴィッキーさんたちが与えられたのは会場の入口近くのブースでした。
こういう常設館ではない展示会には、期待と不安の入り混じった一種のお祭り気分のようなものがあるのでしょうね。
ヴィッキーさんにとっては、メインの虹の7色のカラーローションもまだ正体の知れないバランスボトルも、両方とも自分の子供のような感じだったでしょうね。
このバランスボトルのお披露目の場で、最初に売れたボトルというのがなんとも不思議なのです。
オーラソーマの物語は不思議の連続のようなところがありますね。(*^_^*)
        ——————————————————————– そうこうするうちに人が現れ始め、私たちのスタンドにも女の人が一人やってきました。 日光がスタンドの奥に射し込み、それが自然のスポットライトとなり、「バランス」ボトルを照らし出しています。 ボトルは息づき、きらきらと輝きを放ち、その一つ一つの色が息を呑むような美しさ、どうやらその人も興味を持ったようでした。 売れるわ、と私は思いましたが、まもなく彼女は、のろのろとテントの出入口へと消えていきました。 しかし驚いたことに、数分後、彼女はまた私の横に立っていたのです。
「気になっているボトルをずっと見てたんですよ。  なんだか、惹かれるので」
彼女はこれが何なのか、たずねようともしませんでした。 それに「バランス」ボトルができたのは大会の直前だったので、説明のパンフレットもまだなかったのです。
「あれを一つ、もらえますか」
彼女が指差したのは、ガラス板の支えになっている、濁ったボトルでした。 その真上に、透き通った美しいボトルが載っているというのに、です。 上のボトルが目に入らないのね、と私は思いました。 私としては、質が劣っているものを、黙って売るわけにはいきません。 それで、透明なボトルを彼女に手渡しました。
「日に透かしてみてごらんなさい」光が当たれば、濁ったボトルとは比較にならないことがわかるはずです。 けれどもその人は引き返してくると、すまなそうにこう言ったのです。
「できれば、やっぱりそちらのをいただきたいのですが」
濁ったボトルはガラスの板の支えになっており、その上には、売り物の品がたくさん載っています。 ですから、それを一つ取るといっても、マーガレットにはたいそうやっかいなことで、さらにいえば、テントの設営されている土地は心持ち傾いており、さらにやっかいなことには、そこは芝地で、テーブルの足はあまり安定しているとはいえなかったのです。
私は思わずむっとしましたが、なにせ初めてのお客さんです。 やれやれ、と苦笑しました。 まったく、典型的なおばさんだ。
いつも商品の山の下に、一番いい物が隠れてると思ってるんだわ! 
マーガレットに目をやると、まるで能面のよう、えんえんとボトルを取り除けたり、ガラス板を持ち上げたり、大騒ぎしたあげく、ようやくその女性はお目当てのボトルを手にしました。
「本当にすいません」と、その人は言い、
どうしても、これじゃなきゃって気がしたものですから。  まるで、私に直接話しかけてるみたいで
まだ人もまばらだったので、私は彼女を出口まで送り、
「楽しまれてますか」
と、あいさつ代わりに声をかけました。 すると、彼女は私を見つめ、
「そうだといいのですが」と、ため息まじりに答えました。
「実は、ここに来るのも大変だったんですよ。  最近やっとよくなってきたんですが」
私は同情の舌打ちをし、彼女の後ろ姿を見守りました。
バランスボトル
ヴィッキーさんが最初に作っていたボトルは 100ml。(右から順番に)その後、75mlのボトルとなり、50mlのボトルとなっていく。
      『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p82-84)
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最初に売れたボトルは“濁ったボトル”だったんですね!? (@_@)
でも、考えてみれば、こういう状況が全盲のヴィッキーさんにすべて見えていて、お客さんと何の支障もなくコミュニケーションできているというのは、ずいぶん不思議なことですね。
マイク・ブース氏も、ボトルに関わるこういう場面では、ヴィッキーさんが目が見えないことなど、ふだんまったく意識しなかったと言っていたようですが。
【マーガレットに目をやると、まるで能面のよう】なんて、まるで見えていたとしか思えないような表現ですよねぇ。(*^_^*)
pari 記
       
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