オレンジフラワー水の送り状

オレンジフラワー水の送り状
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』:「5 薬屋」から                         ヴィッキー・ウォール
        ヴィッキーさんの本の面白さは、なかで語られる劇的な挿話や深刻な場面、奇跡的なあるいは不思議な場面などが、飾らないユーモアのある語り口で展開されるところにあります。
ところでそういうさまざまな挿話の中に滑稽な場面というのもあります。
さしずめ今回の挿話などはその滑稽な場面のひとつの代表でしょうね。
オレンジフラワー水というのは、ネロリ油とも言われるらしく、オレンジの花を蒸留することによって生成されるものだそうです。
Neroli
高い香りがあって天然香料やアロマテラピーなどに利用されるみたいです。
化粧品の原料としても使われるらしく、これは蒸留過程に発生する芳香蒸留水が原料となるようです。
この芳香蒸留水のことをネロリウォーターとかオレンジフラワーウォーターとか言うのだとか。
ハーブティーや茶剤として、心因性に関わる不眠、神経強壮目的でひろく大人にも子供にも使われるものみたいですよ。
どの国にも酒好きはいますが、なかでもアル中となると本来の飲み物としてのアルコールだけでは資金的に足りなくなることもあるのでしょうね。
そういうときは、彼らは特別な嗅覚を持っていて、アルコールになりうるものを巧妙に見つけるのかもしれません。
        ——————————————————————– そんなある日のこと、請求書の支払いをしているとき、ウインチェスターの一リットルビン入りのオレンジフラワー水の送り状が目にとまりました。 あら、おもしろい!  オレンジフラワー水は、主婦がケーキのアイシング(砂糖ごろも)にほんのちょっと入れるもので、一度に買う量は普通少しだから、ウインチェスターのビンは、何年も持つはずなのです。 うろ覚えながら、古いボトルには、まだかなりの量が残っていたはず。 きっと何かの都合で突然みんながオレンジフラワー水に殺到したのでしょう、と私は結論を出し、請求書の支払いを済ませ、それっきりでそのことは忘れてしまいました。 しかし、同じ送り状が次の週のうちに届いたときは、さすがの私も何かの間違いに違いない、と業者に問い合わせないわけにはいきませんでした。 けれども、間違いはないという返事が帰ってきたとき、私は結局、こう結論づけたのです。 かわいそうに、彼ももういい加減もうろくして、ご丁寧にもダブって注文してしまったんだ。 いいわ、黙って忘れてあげましょう。
そしてある日の昼のこと、ドリスと私はいつものように、店に鍵を掛けて外に出たのです。 が、残念ながら、いつものレストランは家族の誰かが突然亡くなって店を閉めており、私たちは仕方なく、家に帰ってスナックでお腹の足しにすることにしました。 ドリスはドアを開けると、「ただいま」と声をかけました。 彼が不意の来客だと思って、あわてなくてもすむように、と思ってのことでしたが、返事はありません。 たぶん、店の裏手にでもいるのだろうと思い、店のカウンターの前を通り越して、二階の住まいへと階段を登ろうとしたときです。 異様な音に、私は足を止めました。 それはどう聴いても、いびきでした。 どうやらカウンターの裏からのようです。 引き返してみると、なんとそこには、ほとんど空になったウインチェスターのオレンジフラワー水のビンを幸せそうに抱きかかえて、A氏が正体不明になっていたのです。私は、大声でドリスを呼びました。
「まさかと思ったら」と、彼女も声を張り上げました。
「こんなところへ消えてたのね。この人が飲んじゃってたのよ!」
私たちは爆笑しました。 いくらアルコール度が高いといっても、オレンジフラワー水を、お酒代わりに飲んでしまうとは。 どうやらA氏は、アル中でもあったようです。 残念ながら、店の危険人物であることが判明したからには、私たちの関係も、これでジ・エンドでした。 ついでに言えば、オレンジフラワー水は、すばらしく効果のある催眠剤で、不眠症の治療には二滴ほど、夜寝る前に飲み物に落とすとよいでしょう。
      『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p45-46)
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ヴィッキーさんたちの様子に、とても余裕が感じられますね。
ヴィッキーさんにとってはいちばん自由な時代だったかもしれません。
pari 記
       
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