鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【桜鼠】さくらねずみ・さくらねず≫

今年の桜は、例年になく早い時期に開花しました。

 



いつもなら、いつ咲くのかなと心待ちにする時間もまた楽しいものなのに、今年は気温が高い日が続いたためか、あっという間に満開になってしまいましたね。

慌ててお花見の計画を繰り上げた人も多いのではないでしょうか。

今月取り上げた色「桜鼠」は、淡い紅色の「桜色」に灰色または薄墨色がかって、わずかにくすんだ薄いピンク色になった色をさします。

 

 

「鼠」とは、ねずみいろ(グレー)のことです。

この色から思い浮かべるのは、国の天然記念物に指定されている岐阜県本巣市の「薄墨桜」です。



樹齢1500年を超えると言われるエドヒガンザクラの巨木で、蕾の時は薄いピンク、咲くと花弁は白に見え、散り際には薄墨色に変化するそうです。

遠目には、桜の花に薄く墨を流したように見えることから、この名前で呼ばれています。


古今和歌集にこんな歌があります。

「深草の野辺の桜し心あらば 今年ばかりは墨染めに咲け」

平安時代、京都の南の方に「深草」(ふかくさ)という貴族が集まる風光明媚な場所があり、一角には桜の名所があったそうです。

この歌の作者は、親しい友人を亡くしたばかりでした。

平安時代、近しい人を亡くした時には「鈍色」(にびいろ)の着物を着用して過ごす習慣がありました。

「鈍色」とは濃淡の差はあれ、彩度の低い墨色をさします。




どの色が「鈍色」というわけではなく、喪に服す気持ちを表す場合に、この色名を使うのです。

作者は、人間が墨色の着物で悲しみを表現するように、桜の花に「せめて今年だけは墨色がかった色に咲いてくれ」と呼びかけているのです。

明るい陽射しのもとで咲き誇る桜の花と、大切な人を亡くした悲しみが見事な対比となって、切々と胸に迫ってくる和歌です。

記憶に新しいところでは、先日、俳優の大杉漣さんが急逝されました。

タレントの野村沙知代さんも昨年末でしたが、やはり急に亡くなられました。

昨日まで元気で普通に生活していたのに、あっけなくお別れが来てしまうのは、ご家族や身近な人にとって大変なショックだと思います。

有名人だけでなく自分の身近においても、こういうニュースを聴くと、私自身「あと何回、何十回、桜の花を見られるのだろう?」などと考えてしまうことがあります。

あっけなくこの世を去ってしまう人と、桜の散り際がどうしても重なってしまいます。

まだ十分に美しい花びらが散ってしまうように、患って弱った姿など見せずに「お先に」と鮮やかに逝ってしまうのですね。

悔いのないように一日一日を生きなさいよ、と言われている気がします。

 

 

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。

http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/

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英国オーラソーマアカデミー資格講座 レベル1(GW4日間)

日程 2018年5月3日(祝木)~6日(日) 全4日間
会場 栃木県宇都宮市宝木町 カラーズガーデン
費用 86,400円(税込)
講師 鮎沢玲子
詳細はこちら。

https://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/entry-12355036168.html

 

 

色見本参考:

https://www.colordic.org/colorsample/2340.html

https://www.colordic.org/colorsample/2292.html

 

 





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