「指を口にいれて。大丈夫だから」

ヴィッキーさんはその人生のなかで自分の意図とは関係なく、さまざまな人のヒーリングに立ち会うことになりました。

そこでヴィッキーさんが演じたのはヒーラーの役割でしたが、それはいつもけっしてヴィッキーさん自身が望んだことではありませんでした。

望まないどころか、少女時代に起こった最初のヒーリング体験などでは、ヴィッキーさん自身はその状況を避けたかったに違いありません。

いつも状況に強制される形で、やむを得ずヴィッキーさんはヒーラーとしての体験を重ねさせられたのでした。

けれども、そのような自らは望まない体験を重ねるうちに、ヴィッキーさんに天性のヒーラーとしての自覚が生まれたことも間違いないでしょう。

何度もそのような場面に立ち会った経験値も、ヴィッキーさんをいつか練達のヒーラーに仕立て上げていたようです。

仕事のうえで長年の同伴者となったマーガレットさんに起こった事故の場合は、ヴィッキーさんは自らも驚くほどに間違いなく自覚的なヒーラーとしてふるまっていたようです。

では、ワイト島で起こったというその事故のときのヴィッキーさんの反応をご覧ください。


そして最後に、マーガレットその人の身に起こったヒーリングの話をしましょう。
それは、マーガレットと私がシルビアとの最後の別れを交わしたあとのことでした。
シルビアは私たちのすばらしい友人で、新進気鋭の若いジャーナリストであり、ハーブに関わる仕事をするようにとの内なる声を受け取ったと公言し、突然弾けるような勢いで活躍し出したのは、それほど昔のことではありません。

彼女の人生は熱意にあふれ、期待に満ち満ちており、それはそれは激しく「燃え上がって」いたのです。
シルビアは、いつも私のクリームを使い、地上に咲く花とその秘かな力にいつも大きな関心を寄せていました。
けれども、突如として稀な病気に襲われ、私たちの苦しみに満ちた祈りも虚しく、数週間後には彼方へと旅立ってしまったのです。
ご主人はもちろんのこと、私たちも相当なショックで口が聞けませんでした。

はっきりした理由もなく、才気盛んな若い命があっという間に散ってしまおうとは。
私は心底落ち込み、魂が干涸びた一時期をすごすことになりました。

マーガレットと私が何とか休みをつくってワイト島に出掛けたのは、そんな気分の沈んだ時期のことで、友人であるその土地の看護婦が、一日か二日、旅に合流することになっていました。



その頃は私もまだ目が見えていて、道のりのすべてを、私が運転していました。

私の愛車はウォルスレーで、タンクと同じく車体もがっしりして、それは美しく、それは可愛がっていたものです。

駅でその友人を拾い、トランクに荷物を積み、彼女を後ろの座席にちゃんと座らせたマーガレットは、やれやれと私の隣に腰を下ろしかけましたが、そのとき、後ろのトランクを閉め忘れたかもしれないと、ふと思ったらしいのです。
そのときどうしてそんな器用な真似ができたのか、理解に苦しむのですが、開いたドア越しに後ろを見ようと身を乗り出したはずみで、ドアの縁に指を掛け、そのまま勢い余ってドアを閉めてしまったのでした。
彼女の手はドアに挟まれ、二本の指が逆に曲がってしまったのを見て、私とその友人はあわててドアを開けました。
マーガレットは真っ青、その痛みたるや、ものすごいものでしょう。

「ああ、なんてこと」

友人の顔からも、血の気が失せています。

「すぐに病院に行きましょう、ヴィッキー」

ここであえて言わせてもらえば、私はかなり繊細で、同情心のあつい性格で、普通だったらこんな災難にあえば、完全にパニックになっていたところです。
マーガレットの貴重な手が、なんてこと! この恐ろしい事故で、あれほどたくさんの人を癒してきたこの手も、もうおしまいだわ! という具合に。

けれどもそのとき私に起こったのは、奇妙きわまりないことでした。
しんとした静けさが私を包んでいたのです。
それにそれまでに、一言も発していませんでした。

「指を口にいれて」

きわめて気軽な調子で、私は言いました。

「大丈夫だから」

『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p255-257)


 

ヴィッキーさんの内面にある絶対の確信ですよね。

その臨在のパワーが他の当事者たちにも現実となって。物理次元での出来事に影響を及ぼすのでしょうね。

「指を口にいれて。大丈夫だから」って、視覚的現実をまずマーガレットさんの目から奪ったのでしょうか。

pari 記

 

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