マインドから距離を置く

マインドから距離を置く
オーラソーマのカウンセラーとなるために」より  ワドゥダとのインタビュー
        私たちは物心ついてから、知らず知らずのうちに“自分が思っていること”が自分なのだという信念を築いていくものです。
赤ん坊のときには知りもしなかった“自分の名前”を知り、この身体が自分なのだと教わります。
やがては少しずつ自分の体験の記憶を持つようにもなります。
そして記憶をつないで自分の物語を持ちはじめるようになって、自分の家族の歴史を知り、自分の国を知り、自分の物語にまつわる大きな文脈を獲得していきます。
そうしているうちに、そういう文脈の中に生きている“自分”に起こる思考や感情こそが自分の証なのだと思うようになるわけです。
ところが、この文脈の中で親の期待を受け、その期待に応えたいという欲望が現れ、他人との比較が起こるうちに、その欲望の達成はだんだん困難なものにもなっていきます。
そしていつか、自分がまとった物語の中で溺れてしまうような状況も起こるわけです。
そうやってスピリチュアルな探求というものがはじまります。
それからはこれまでとちょうど逆の、まとった物語を脱いでいく作業が始まります。
いろいろ自分に突きつけていた幸福の条件は、全部自分が押し付けられた物語を疑うことなくまとってきた結果なのだと知り始めます。
少しずつ物語(つまり条件)を手放し、身軽になっていく過程で、やがて自分に起こっている思考が、自分が考えていることではなく、ただ起こっているのだということを知るようになります。
つまり、自分の思考や感情も別に自分ではなく、ただ起こっている風景のようなものだと知るようになるわけです。
思考との距離ができてきます。
そのことがいろいろな形で起こるようです。
ワドゥダにはそれが瞑想という思考を見守る作業の中で起こったようです。
では「ワドゥダとのインタビュー」からマインドから距離を置くというテーマに触れた部分をご紹介しましょう。
       —————————————————————— <セラピーの限界とマスターとの出会い>
しかし、さまざまなセラピーを探求していくうちに、私はその限界にも気づくようになりました。 本当に多くのことを得られたことに感謝していますが、それらのセラピーは、その創始者たちが宣伝し主張しているような効果を必ずしももたらしてはくれませんでした。
たとえばプライマルセラピーでは古いパターンやブロックなどから完全に解き放たれた、完璧に自由で生き生きとしたプライマルマンが生まれると主張しています。 それはとても素晴らしいことに思われたので、私は全身全霊をもって、強烈に、深く、誠実に追求したのですが、それが究極の結果をもたらすものではないことがわかってきました。 私は単なる心理療法以上の、何かもっと大きなものを求めていたのです。
私はスピリチュアルなものに目を向け始め、著書や友人を通して知った光明を得た人たちを探し始めました。 なかでもクリシュナムルティには何度も会いに行きましたし、サイババやその他数人の人々にも興味を持ちました。 そうこうしているうちに私はバグワン・シュリ・ラジニーシに出会い、彼の弟子になりました。 彼は今は和尚と呼ばれています。 彼と出会うことによってセラピーやカウンセリングがまったく新しい次元のものになっていきました。
和尚はセラピーやカウンセリングなどをもっと大きな観点から、それらがあるべき場所に位置づけたのです。 もはやセラピーはそれ自体が目標、あるいは旅の終着点ではなくなりました。 私はそれらを探究の道の途上において非常に有益で、助けとなるステップであると理解するようになりました。 なぜならセラピーは、実際に存在していながら、まったくあるいは部分的にしか意識されていない生の領域に気づかせてくれるからです。 そしていったんこれらの領域に光が当てられ、気づきと意識がもたらされると、瞑想という、より大きな可能性が生まれてきます。
瞑想とはマインドから距離を置く機会をあなたに与えてくれるものです。 瞑想をすることによって、マインドが問題だと思っていたものが実際には問題でもなんでもなく、マインドとは単にそのように作用するに過ぎないことがわかるようになりました。
たとえば、マインドの中にあるものにはすべてポジティブな面とネガティブな面があります。 ですから、ネガティブが浮かび上がってきた時、私はもうそれを問題として認識することはありませんでした。 それは単にマインドが持つ二面性のうちの、一方が現れたに過ぎず、別に悪いことではないのです
ネガティブなマインドをポジティブに変えるために、大変な努力を続けることによって問題が解決するのではありません。 むしろそれをそのままにして、それからもっともっと離れて行き、基本的にはそれと自分自身を同一化しないようにする。 そして、この方法の方がずっと上手くいくのです。
カウンセリングやセラピーは、この非同一化していく過程においてとても役立つステップとなります。 なぜなら、それは人間の内に、すなわちサイキの中にあるさまざまなものについて、途方もなく大きな気づきをあなたにもたらしてくれるからです。
        『リビング・エナジー』Vol.4(p7-8)
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【ネガティブなマインドをポジティブに変えるために、大変な努力を続けるこ とによって問題が解決するのではありません】……。
【むしろそれをそのままにして、それからもっともっと離れて行き、基本的に はそれと自分自身を同一化しないようにする】……。
それが自分が考えていることではなく、たんにいま起こっている思考にすぎないことを知っていくのでしょうね。
こうしてひとつの物語が出てきたところに戻っていくのですね。
pari 記

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