日本の伝統色についてかなり長いこと原稿を書いていますが、ときどきまだ知らない色名に出会うことがあります。
今回の「乙女色」もそのひとつです。
乙女色の名の由来は「乙女椿」の花の色から来ていると言われています。
乙女椿自体を知らなかった私は「こんなに可愛い花があったのか」と驚きました。
つやつやとした緑色の葉を背景に、八重咲きの花をつけます。
たくさんの花弁がまるで曼荼羅のように重なり、中心の花芯はほとんど見えません。
花弁の色は可憐な薄いピンク色で、まさにうら若き乙女の姿を思わせます。
こんなにも華美でありながら整った印象の花は、最近の品種改良によるものなのかと思ったら、意外にも江戸時代後期からすでに栽培されていたそうです。
大抵、椿の花というのは、咲いていて急にポトっと花が地面に落ちるのです。
そのため「打ち首」を連想させると、江戸時代に武家の人たちには敬遠されたと聞いたことがあります。
しかし、乙女椿の花は落ちにくく、木に付いたまま枯れることもあるようです。
椿の品種は、世界中に3000種類くらいあるのだそうです。
そんなにあるんだ・・・これも意外でした。
私などは、椿と山茶花(サザンカ)の区別すら怪しいのに。
花の色も、白や赤、濃いピンクやマゼンタなど多彩です。
椿の花の季節は、主に冬から春。
12月ごろから4月ごろまでです。
家庭の庭木として、また公園の木々などにも、椿はよく植えられています。
この時期は、つい桜にばかり目が向いてしまいますが、身近にある椿を探してみようと思います。
もう、まもなく桜は散り、同じころに椿の季節も終わります。
春の最後を彩るように、咲き誇る乙女の最後の姿が見られるでしょう。
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/f9d0c5