バイオダイナミック農業へのいざない

バイオダイナミック農業へのいざない
       「バイオダイナミック農業へのいざない」から ケイト・アスペイ
        人間はだれでも、生きていくなかでは多くの変化を通りすぎるものです。
肉体としてこの世に誕生したときには何の知識も持っていなかったのですから、それから随分色々なものを身につけてきたわけです。
でも子供のときは、その変化はスムーズだったろうと思います。
なぜなら、生物的な防衛機構は働いていたでしょうけど、精神的な意味でまだ防衛すべきものを多くは抱えていなかったでしょうから。
でも、大人になってからは違いますよね。
元々持っていた性質や、身につけた個人的能力以外に、何よりも大人は生きている社会での通念をもっているからです。
良かれ悪しかれ、大人は子供ほど素直に変化に順応することはできません。
とはいえ、変化せずに生きていくこともできないので、あるときには自ら求めて、またあるときには嫌々ながら、変化に対応していくわけでしょうね。
だからたいてい変化は、それなりの時間をかけてゆっくり起こります。
誰だって、自分の“常識”ではとても受け入れがたい情報を、簡単に受け容れるわけにはいきませんから。
しかし時には、それまでと圧倒的に違う情報が入ってくる、というような情況が生まれることがあるのでしょうね。
周囲の人から見れば、それは“洗脳”というような言葉で語られる事態にも見えるかもしれません。
でも自らその変化を望んだ人には、それは新しい世界の発見かもしれません。
今回ご紹介するケイト・アスペイとその同僚に起こったのはそんな変化でした。
有機農法そのものすら現実的ではないと思っていた方々が、バイオダイナミック農法の世界に真っしぐらに突っ込んでしまったのだそうです。
ではケイト・アスペイさんの記事をご紹介しましょう。
        —————————————————————- バイオダイナミック農業へのいざない
今年3月にオーラソーマ・ファミリーに加わってから、想像をはるかに越えて、私のものの考え方に変化が起こりました。 私はここでいったい何をするのかまったく分からない状態で、面接にやってきたのです。
マルコム氏にバイオダイナミックやデメテル基準についてどんなことを知っているかと聞かれたときには、何のことかさっぱり分からず、本当に困りました。 伝統的な農業や有機栽培を学んでいた私は、有機農法はとてもいいものだけれど、実際的ではないと思っていました。 けれども、有機農法よりもっと進んだ、宇宙までも考えに入れた、もっと別の農法や園芸というものがあると知って、本当に私の理解を越えるものだという気がしました。 けれども、これは私にとって、諺にあるように牛の角をつかんで牛を取り押さえるかのような果敢なチャレンジだという気もして、これが私には必要なことなのだろうと心に決めたのです。
私のパートナーであるケイト・ウリーと共に、バイオダイナミックの父であるルドルフ・シュタイナーの理論を解説している適当な文献を、なんとか読み終えました。 そして牛の角に肥やしを詰める(調剤500)という考えに笑い転げていた段階から徐々に、1920年代にすでに農業の未来を見通していたシュタイナーの深い洞察力に対し、実際の理解と尊敬を持つ段階へと進歩していったのです。
情報収集のため、バイオダイナミック農園で開催されたログボローでの肥料ワークショップに参加してみました。 魅力的な講義と素敵な食事で心は落ち着き、おなかは一杯。 そこで私たちはうやうやしく、適当な調剤と肥料を山と買ったのでした。 けれども私たちはまだまだ知りたいと思っていたのです。
そして7月がやってきて、必然的にケイトと私は、デビット・ストアーと共に、シュタイナー・アダルト・トレーニングセンターでもあるエマーソン・カレッジで、バイオダイナミック農業に関する集会に参加することになり、最もすばらしい週を過ごしたのでした。 そこで私たちは、シュタイナーのレクチャーに基づくすべての理解や理論に心を開いたのです。 他の人の意見に耳を傾けたり、農園や庭園を訪れて実践的側面を目のあたりにしたことで、たくさんのことが明らかになり、それまでの疑問は完全に払拭されたのでした。
だからこそ私は今、ここ数か月の間に変化を遂げた人間として、ここに居るのです! 将来はどうなるのかって?  ケイトと私は、ハーブ園を完全なバイオダイナミックの農園にするために、調剤をまいたり、肥料を作ったり、雑草と格闘したり、根付けをしたりと奮闘しています。
私は人々がもっと現状の食物の質に不満を覚えるようになり、より意識をもって作物を生み出すプロセスに関心を寄せるようになるにつれ、私たちは将来の農業の先駆けになっていくだろうと感じています。
ここでシュタイナーの一節を引用します。 「人は不健康な土地からなる食物を摂り続けるかぎり、魂が肉体という牢獄から自由になるためのスタミナを得ることはできないだろう
                 『リビング・エナジー』創刊号(p41) —————————————————————-
なるほど。
これは、今から二十年ほど以前に起こったことかもしれません。
それにしても、それまで自分が笑っていたことに参入したわけですから、大変化ですよねぇ。
今は確信をもってその道を邁進されているのでしょうね。
pari 記

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