ある自閉症児の物語
人と人のコミュニケーションの問題には、一筋縄ではいかないところがありますよね。
そもそも人は人を理解できるだろうか、ということすら問題にもなりえるほどです。
なにしろ個々人は異なるDNAをもち、さらには別の条件づけを受けているわけですから、間違いなく一人として同じ条件の人間は存在しないわけです。
それぞれ違った背景を抱えた人間が、別の背景から発語された言葉を類推し、解釈しているわけです。
ですから厳密な意味での相互理解は、ありえないとも言えるわけでしょう。
とは言え、人と人の意思疎通がまったく不可能なら社会は成立していないわけで、むろんある程度の誤差を許容した理解があるからこそ社会も存在しているはずです。
なので、いわゆる通常の範囲では、コミュニケーションが成り立っているというのが社会の共通理解だろうと思います。
“通常の範囲”と言いました。
それはじゃっかん語弊があるかもしれませんが、“通常人の範囲”ではと言い換えてもいいかもしれません。
というのは、いわゆる通常のコミュニケーションが成り立たない、と言われる方々もいらっしゃるからです。
“統合失調症”とか記憶能力の劣化を原因とする“アルツハイマー症”とか、通常の意思疎通が困難なさまざまな“病的”状況が存在すると思います。
そのような状況のひとつに「自閉症」という症状もありますよね。
——————————————————————– 自閉症(じへいしょう、Autism)は、社会性や他者とのコミュニケーショ ン能力に困難が生じる発達障害の一種。 http://ja.wikipedia.org/wiki/自閉症 ——————————————————————–
「自閉症」とくくられる症状の中にも、知的障害をともなう「カナー自閉症」とか知的障害をともなわない「アスペルガー障害」などさまざまなタイプがあるようです。
大雑把に言えば「自閉症」とは他人に自分をうまく表現できない状況を指すのでしょうが、じつはこれには“意思疎通のための適切な表現形態を見つけられない”と言うべき場合も含まれるようなのです。
今回ご紹介する「書評」で取り上げられているのは、そのような障害を抱えていたアドリアナという自閉症児の物語を綴った『永遠の子供』という本です。
ここで話題になっている「ファシリティテッド・コミュニケーション」という手法は、健常者(通常はお母さん)の助けを借りた表現方法です。
日本でもこの手法で劇的に内面を語り出した方々がいるようです。
最初は重度の知的障害を持っていると思われていたルナさんの場合なども、それに当たるのかもしれませんね。
では「書評『永遠の子供』(ジョン・コッシュ)」の記事をご紹介しましょう。
——————————————————————– 書評「永遠の子供」
これはアドリアナという名前の自閉症児の物語である。 自閉症のため、外部とのコミュニケーションができず、自分のなかに“封じ込められた”少女の内に秘められた知性と才能の開花が描かれている。 アドリアナの弟妹たちがどんどん大きくなって彼女を追い越していくことに心を痛めていた母クリスティが、心を込めて語っている。 アドリアナは理解力や行動、話し方、動きなどすべての発達が遅れているように見え、自閉症特有の激しいかんしゃくを起こす子どもだった。
アドリアナが9歳のとき、「ファシリティテッド・コミュニケーション」という簡単なワープロを使ってコミュニケーションを行う方法が考え出された。 ヘルパーに手と腕を支えられながら子どもが文字を選びながら言葉にしていく。 アドリアナの場合、この手段がまったく予期せぬ利器となったのである。 母クリスティが驚いたことには、彼女の娘は非常に聡明で、すでに文字を読むことができ、生まれながらに数学がよくできるのだった。 アドリアナは人の感情を敏感に感じ取り、やがて母親とテレパシーによって意志の疎通ができるようになった。 さらに、自ら進んで母親の胎内にいたときの様子や、自閉症で生まれることを自分で決めたこと、いくつもの過去生、彼女がコンタクトしている魂のガイドの存在などについても詳しく話し始めたのである。
アドリアナに会い、この本の序説も書いているジョーン・ポリセンコは、自閉症児たちはいったんコミュニケーションの術を得ると、言語、数学、ビジュアルな記憶などにおいて驚くべき才能を現すことを確認している。 (自閉症児たちは障害を持っているのではなく、一般の人々とは違った形の才能があるのです) これらの事実が私たちに思い起こさせることは、明らかに回復不能なまでに脳に障害を受けた人たちが特別な器具なしではまったくコミュニケーションができないにも関わらず、なお確かな意識を保っているという最近の報告書である。
アドリアナは世界に向けた愛と理解のメッセージを携えているとクリスティは感じている。 そしてクリスティ自身は自閉症児とその家族を助けることに彼女のエネルギーを注いでいる。 本書はこの愛と理解というメッセージの中心をなすものである。
『リビング・エナジー』Vol.3(p59) ——————————————————————–
なるほど……。
最近は、胎児のDNA調査でその子が将来罹患する病気とその発症率なども診断できるようになりつつあるそうですが。
何を基準にして、誰が、何を判断するのか……。(-_-;)
なかなか難しいところですね。
pari 記
Twitterブログパーツ