鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色≪【狐色】きつねいろ≫

11月になると朝晩の気温がぐっと下がりますね。

そろそろ温かい食べ物、特に鍋料理が恋しくなってきます。

あるアンケートでは、家庭で食べる鍋料理で、不動のいちばん人気は≪おでん≫なのだそうです。

よく味が染みた大根や、こんにゃくに混じって、こんがりと揚がったさつま揚げの濃い茶色や、厚揚げの薄い茶色が、見た目の温かみを増してくれます。

加熱すると食べ物の多くは茶色っぽくなります。

それは「メイラード反応」と言って、還元糖とアミノ化合物を加熱すると褐色物質が生みだされるからなのだそうです。

焦げ過ぎない程度に、ちょうどよく美味しそうに加熱した状態を表すときに、「こんがりきつね色」という表現を使います。

たとえば、クッキーやケーキやトースト、揚げ物など。

美味しいものって、たいがい茶色をしています。

でも、それを「こんがりきつね色」と言い換えると、それだけでちょっと上品になり、風流な感じがするではありませんか。

きつね色とは狐の毛の色に由来していて、やや赤みのある黄褐色のこと。

実は日本の色名で動物の名前がついたものは、鳥類を除けばとても少ないのです。

哺乳類では、ねずみ色ラクダ色くらいではないでしょうか。

 

反対に鳥類から名付けられた色名はとても多いです。

「きつね」と聞けば、すぐに油揚げを載せたきつねうどんやきつねそばを思い浮かべます。

地域によってつゆの色や味に違いはありますが、使用するのは必ず、砂糖、醤油、みりんなどを使って甘辛く煮付けた油揚げ。

その理由は、油揚げがきつねの好物だという話に由来していますが、ほんとうかしら?

油揚げを使ったお寿司を「いなり寿司」と呼ぶのも、稲荷神社(お稲荷さん)の眷属がきつねだからです。

こんがりきつね色に焼き上がったお菓子は、なんとなく秋冬のイメージです。

たとえばしっとりした生地のどら焼きは、夏よりも涼しいまたは肌寒い時期に食べたいし、たい焼きだったらもっと寒くなってから熱々を食べたい。

きつね色のことを書いていたら、食べ物の話ばかりになりました。

これを読んでいるみなさんも、きっとお腹が空いてきたことでしょう。

11月はまだ食欲の秋と言っていい時期です。

今夜は美味しいきつねうどんが食べたいな。

 

鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/

 

色見本参考:https://www.colordic.org/colorsample/2216
      https://www.colordic.org/colorsample/2289
      https://www.colordic.org/colorsample/2211

 

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